研究実績の概要 |
浸潤性膵管癌は膵癌全体の90%以上を占め、未だに早期診断・治療が困難な悪性腫瘍である。特に術後再発例や切除不能症例においては未だに予後不良であり、従来から用いられている抗癌剤とは作用メカニズムが異なり、癌細胞と間質をも包括的にとらえた創薬開発が必要であると考える。本研究においては、多様なチロシンキナーゼ阻害活性を有するインディルビンに着目し、膵管癌特異的なインディルビン誘導体の同定を目的とした。 当該年度までに、インディルビン誘導体のライブラリーのなかから、線維芽細胞のスフェロイド形成(三次元凝集)には影響を示さないが、膵管癌細胞ならびに膵管癌細胞と線維芽細胞との共培養におけるスフェロイド形成と細胞増殖を阻害するインディルビン誘導体8種類を見出した。さらに、同インディルビン誘導体のなかから、濃度依存的なスフェロイド形成ならびに増殖抑制をするインディルビン誘導体2種類までに絞り込んだ。2種類のインディルビン誘導体に関しては膵管癌の皮下移植モデルにおいて有意な抗腫瘍効果が認められた。インディルビン誘導体5-methoxyindirubin 3’-oximeにおいては、p-CDK1/Cyclin B1レベルの低下からG2/M arrestを引き起こし、最終的にはアポトーシスを誘導することを明らかにした。以上の研究成果を英文雑誌(Sano M and Ichimaru Y, et al., Cancer Letters, 2017)にて公表した。膵管癌の自然発症モデルに対するインディルビン誘導体の抗腫瘍効果に関しては、英文論文として投稿準備中である。
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