研究課題/領域番号 |
26460497
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
浅井 明 日本医科大学, 医学部, 研究員 (30500011)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 耐糖能異常 / 糖尿病 / 動脈硬化 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づいて本年度は「動脈硬化巣の形成・進展に及ぼす耐糖能異常の影響を評価する動物モデルの確立」を目指した。具体的には、我々がこれまでに作成した耐糖能異常易発性および抵抗性(Prone系およびResistant系)の両系統のマウスに動脈硬化誘発飼料(コレステロール/コール酸含有高脂肪飼料)を与えることによって、大動脈弁周囲に動脈硬化巣を誘発させた。その結果、当初計画どおり、雌性マウスへの20週間(8–28週齢)の動脈硬化誘発飼料の給餌によって定量解析可能な動脈硬化巣が形成され、Prone系で動脈硬化巣が亢進していることを確認した。また、複数回の繰り返し実験において、この試験飼育条件で形成される動脈硬化巣の大きさには優れた再現性があり、Prone系における動脈硬化巣の平均サイズはResistant系の約4倍であった。 また本年度は、耐糖能異常による動脈硬化亢進における血糖値変動の直接的な作用の評価により特化した新たな動物モデル系の作出を試みた。具体的には、一般に市販されている近交系マウスであるC57BL/6を用いて、上記同様、雌性マウスに動脈硬化誘発飼料を20週間給餌し、その試験飼育期間を通じて、グルコース溶液(50 mg glucose/mouse)の1日2回投与を継続した。その結果、グルコースを投与したマウスでは投与後に一過性の血糖値上昇を認め、試験飼育期間後の大動脈弁周囲における動脈硬化巣サイズは蒸留水を投与し続けた対照マウスの約4倍の大きさであった。このとき、グルコース投与マウスと対照マウスの間で、体重、脂肪組織重量、各血清脂質パラメーター等に有意な差を認めなかったことから、このC57BL/6マウスを用いたグルコース連投モデルは、動脈硬化巣形成における血糖値変動の直接的な作用の評価に有用と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画である「動脈硬化巣の形成・進展に及ぼす耐糖能異常の影響を評価する動物モデルの確立」について、おおむねその目的を達成することができた。加えて、動脈硬化巣形成における血糖値変動の直接的な作用の評価により特化した新たな動物モデル系の作出を試み、一定の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画にもとづいて、来年度は「耐糖能異常が動脈硬化巣形成を促進する作用機序(主要経路)の動物レベルでの解析」を行う。具体的には、上記2つの実験系(Prone/Resistant系モデルとグルコース連投モデル)で飼育したマウスより大動脈を採取し、動脈硬化巣が形成される前段階での動脈硬化促進的な変化(糖化、酸化、炎症性マーカー等の変化)について組織レベルで解析する。また、「耐糖能異常による動脈硬化巣形成促進に対する生理学的・薬理学的な介入の有効性の検討」ついても具体的な介入方法・評価方法を検討し、試験を開始する。
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