本研究課題では、まず我々がこれまでに作出した耐糖能異常易発性および抵抗性(Prone系およびResistant系)の両系統のマウスに動脈硬化誘発飼料を与えることによって、大動脈弁周囲に動脈硬化巣を誘発させる実験系を確立した。この実験系で形成される動脈硬化巣の大きさには優れた再現性があり、Prone系マウスにおける動脈硬化巣の平均サイズはResistant系マウスの約4倍であった[平成26年度]。この実験系において、動脈硬化巣形成に及ぼすメトホルミンの効果を検討し、Prone系マウスにおける動脈硬化巣形成がメトホルミンの投与によって有意に抑制されることを認めた[平成27~28年度]。 また、耐糖能異常において「血糖値の変動」そのものが動脈硬化巣形成に及ぼす影響をより直接的に評価する実験系として、市販の通常マウス(C57BL/6)に動脈硬化誘発飼料を与えながらグルコースを連続投与する実験系を新たに構築した。この実験系においてもグルコース投与群の動脈硬化巣サイズは蒸留水投与対照群と比較して約4倍の大きさであった[平成26~27年度]。 これらの結果は、耐糖能異常(における血糖値の変動)が動脈硬化巣の初期形成過程を惹起することを、生体(動物)レベルで明確に示している。本研究課題で構築した実験系を用いて生体レベルでの検討を今後さらに進めることによって、「耐糖能異常を起因とする動脈硬化巣形成促進」の作用機序(生体内における主要作用経路)解明に繋がる重要な知見が得られるものと期待される。
|