研究課題/領域番号 |
26460502
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
喜納 裕美 (早下裕美) 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別研究生 (60532728)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / アデノ随伴ウイルスベクター / 筋ジストロフィー |
研究実績の概要 |
本研究では、筋ジストロフィーなどの遺伝性疾患に対する根治療法として研究が進められているウイルスベクターを用いた遺伝子治療の際に、最大の障壁となっている免疫応答についての検討を行っている。昨年度までで筋ジストロフィーのモデル動物であるCXMDJを用い、胎児期に母犬にウイルスベクターを投与することで免疫寛容を誘導し、生後に再度AAVを投与した患犬において、筋ジストロフィー病態の推移、AAVに再度曝露した際のPBMCにおける免疫反応を解析した。AAV投与から2年半年にわたって解析したところ、ほかのAAV非投与の患犬と比較して、筋ジストロフィー病態の進行が緩やかであることがわかった。さらに、生後に免疫寛容誘導を行うことを目標として、正常犬に間葉系幹細胞(MSCs)と同時にAAV-Lucを投与し、transgeneの発現の程度をMSC(-), AAV-Luc投与のものと比較した。投与方法はまず筋肉内投与で行った。AAV筋肉内投与4週後に骨格筋の生検を行い、transgeneであるLucの発現を比較したところ、MSC非投与ではLucの発現はほとんど見られなかったが、同時にMSC投与を行ったイヌの筋標本では、Lucの発現があり、その周辺にCD4, CD8陽性の細胞が観察された。このことから、MSC投与によりtransgeneの発現減弱は少なくとも遅くなることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後天的免疫寛容誘導を行ったイヌについては、未だ正常犬とマーカー遺伝子を用いた検討ではあるが、今回用いたMSCとの投与方法により、マーカー遺伝子が長期にわたって骨格筋で発現することが確認された。現在同様にMSCとAAVの併用で経静脈投与で解析を行い、さらに筋ジストロフィーモデル犬とAAV-microdystrophon(治療遺伝子)を用いて解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
先天的免疫寛容誘導(胎児期投与)について早急に論文として発表する。さらに後天的免疫寛容を行う群については、正常犬とAAV-マーカー遺伝子投与群での解析を進めるとともに、筋ジストロフィーモデル犬とAAV-治療遺伝子投与での筋ジストロフィー病態解析(ホルター心電図測定、心エコー、走行、起き直りなど)を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも実験に使用可能であったイヌ(筋ジストロフィー犬)の頭数が少なかったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
筋ジストロフィー犬の繁殖実績に基づいた使用実験計画を立案し、使用頭数を交渉、必要な量のデータを取れるようにする。
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