テニア科条虫はヒトや家畜の病原体を含むため、医学・獣医学領域で重要な動物群となっている。従来この属はTaenia属とEchinococcus属から構成されていたが、本研究代表者はテニア属が側系統群であることから分類学的改訂に着手し、現在までにHydatigera属を復活させ、Versteria属を新設した。しかしながら、Taenia属として残されたグループには幾つかの単系統群が存在しており、分子系統学的解析が全く行われていない種が多数存在する。本研究は系統進化に基づいて、Taenia属を改定し、2~3の新属もしくは亜属を新設することを目的としている。研究計画初年度(平成26年)はエチオピアで野外調査を実施して幾つかの条虫種を収集し、Hydatigera属に含まれる新種を記載するための補助サンプルとした。また、海外の研究協力者から新北区に分布するVersteria属の新種を入手し、ミトコンドリアゲノムと核DNAマーカー(18S rDNA、pepck、pold)の塩基配列を決定した。これらの新種については随時論文が公表される予定である。南米の固有種である Taenia talicei、ならびに北極圏に分布する Taenia polyacantha arcticaも入手し、分子系統解析に必要なDNA塩基配列を決定した。これらの2種はTaenia属の改訂をする上で重要なサンプルとなった。
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