研究課題
テニア科条虫はヒトや家畜の病原体を含むため、医学・獣医学領域で重要な動物群となっている。従来この科はTaenia属とEchinococcus属から構成されていたが、本研究代表者はTaenia属が側系統群であることから分類学的改訂に着手し、現在までにHydatigera属を復活させ、Versteria属を新設した。しかしながら、Taenia属として残されたグループには幾つかの単系統群が存在しているため、さらなる分類学的改訂が望まれている。本研究は系統進化に基づいて、Taenia属を改定し、2〜3の新属もしくは亜属を新設することを目的としている。研究次年度(平成27年)はヘルシンキ大学のAntti Lavikainen博士を招聘し、彼が世界中から集めたTaenia属条虫7種のミトコンドリアゲノム完全長DNA、核DNAマーカー(18S rDNA, pepck, pold)の塩基配列を決定した。また、Hydatigera属の新種H. kamiyai (Int. J. Parasitol. 46: 361-374, 2016)、Taenia属の新種T. lynciscapreoli (ZooKeys 584: 1-26, 2016)を発表した。特に、H. kamiyaiは従来のネコジョウチュウH. taeniaeformisの分類を改めることになったため、極めて重要な報告となった。Versteria属の新種も発見しており、北米・ヨーロッパの研究者と記載の準備を進めている。このように本研究計画の進捗状況は順調で、最終年度(平成28年)も出来るだけ多くのTaenia属条虫の種類を遺伝子解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究の進捗状況は予定通りであり、論文も随時公開しているから。
出来るだけ多くのTaenia属のタクソンを収集して、分子系統解析を実施する。
当該年度に予定していた研究については、購入済みの物品により達成できたため。
遺伝子解析用の試薬をただちに購入する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件)
International Journal for Parasitology
巻: 46 ページ: 361-374
10.1016/j.ijpara.2016.01.009
ZooKeys
巻: 584 ページ: 1-26
10.3897/zookeys.584.8171