研究課題/領域番号 |
26460506
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
矢野 泰弘 福井大学, 医学部, 助教 (60220208)
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研究分担者 |
夏秋 優 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (60208072)
高田 伸弘 福井大学, 医学部, 客員准教授 (90003409)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 媒介動物 / 媒介サイクル / マダニ / ウイルス / 重症熱性血小板減少症候群 |
研究実績の概要 |
我が国で2013年に初めて症例報告がなされた重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のマダニ媒介サイクルの解明を目的に、平成26年度にはこれまでに福井県嶺南地方および患者発生地の兵庫県豊岡市に定点調査地を設定し、植生上のマダニ類の採集結果から季節的消長を明らかにした。採集されたマダニから主に成虫につき、SFTS遺伝子検出に供試し検出を試みたが、いずれも陰性であった。一方でウイルス侵入の感染門戸となるマダニ刺し口周囲の皮膚病態を解析した。平成27年度では以下の4点について研究を進めた。 1. マダニ類の採集をこれまでどおりの定点調査地で引き続き行い、特にタカサゴキララマダニとフタトゲチマダニの採集に重点を置いた。実際に複数患者をみた兵庫県北部産マダニから相当の遺伝子検出には成功したものの、福井県産マダニのウイルス保有率が低いと推定されるため、SFTS患者多発地である愛媛県および徳島県で採集されたマダニを追加してウイルス検出に供試している。 2. 上記マダニ類のSFTSウイルス保有頻度を測るため、その供血宿主動物での感染頻度も比較すべく野鼠、放牧牛また郊外定住飼いイヌなどでの同ウイルス抗体価測定を試行しつつある。 3. 培養細胞で増殖されたSFTSウイルスの電顕観察を行い微細構造を明らかにした。ウイルスのビリオンは直径80nmの均一な球形を呈し、再外層は糖タンパクのスパイクを有するエンベロープで覆われていた。ウイルスは細胞質内に遊離して存在していた。これらの特徴はブニヤウイルス科に特徴的なものである。 4.SFTSの人への感染リスクを推定する目的で、SFTS患者の多い西日本を中心にマダニ刺症患者の実態調査を行い、咬着マダニ種とその地域差、マダニ咬着後の病状などについて検索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.SFTS媒介マダニの候補に関して、調査地におけるマダニ類の季節的消長の分析結果とこれまでに報告された人体マダニ咬着症例から、タカサゴキララマダニとフタトゲチマダニを有力な媒介マダニと予想している。 2.マダニ体内に存在するウイルスの電顕観察までは成功していないが、SFTSウイルス遺伝子陽性のマダニの存在を認めている。さらに培養細胞で増殖されたSFTSウイルスの電顕観察を行い微細構造を既に明らかにしているので、陽性のマダニ体内のウイルス像を電顕的に検出することは容易であろうと思われる。 3.以上の結果ならびにマダニや野生動物のSFTSウイルス保有が患者発生地域に高目の傾向にあることなどを併せ考えれば、本症のマダニ媒介サイクルの解明につながるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.マダニからのSFTS遺伝子検出に関して、新たにビーズ式破砕装置(試料・細胞破砕装置)を導入した。これによりこれまでの細胞破砕作業が均一、迅速、且つ大量にできるようになった。ウイルス陽性マダニの採集できる調査地点も把握できているので、マダニの電顕用サンプルの作成と検出に努める。 2.培養細胞で増殖されたSFTSウイルスの電顕観察から微細構造特徴を明らかにしている。また、マダニ組織の電顕観察ではこれまでにリケッチア等の検出に関する研究実績があり、陽性個体が得られ次第、マダニ体内におけるウイルスの存在様式を明らかにする。 3.マダニ刺し口周囲の皮膚病変について、さらに症例を集めて検討すると共に、野鼠を含む野生動物からの試料も追加して検討する。また、野生動物のSFTSウイルスに対する血清抗体価の測定によって、野外環境でのウイルス感染環を窺うことで、地域ごとの感染圧を推定する。
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