研究課題
芽殖孤虫はマンソン裂頭条虫と近縁の条虫で、プレロセルコイドのみが知られている正真正銘の孤虫である。感染すると致命的な経過をとり、これまでに救命し得た症例はない。病害性の本体は宿主体内におけるプレロセルコイド(裂頭条虫類の感染型幼虫)の増殖である。本研究では、近縁のマンソン裂頭条虫とゲノムを詳細に比較検討することで、芽殖孤虫がどのようにして無性的増殖能を獲得したかを明らかにする。芽殖孤虫ゲノムのアセンブルは、推定ゲノムサイズが654 Mb、N50スキャッフォルドサイズが1.24 Mbで最長スキャッフォルド8.10 Mb、N50スキャッフォルド数は146個、ギャップが51.1 Mb(全ゲノムの7.8%)で、大幅に改善され概要ゲノムとして公開可能なレベルに十分到達している。マンソン裂頭条虫ゲノムも、推定ゲノムサイズ796 Mb、N50スキャッフォルドサイズが0.82 Mb、最長スキャッフォルド5.49 Mb、N50スキャッフォルド数は271個、ギャップが77.8 Mb(全ゲノムの9.8%)で、芽殖孤虫とほぼ同等の結果が得られている。ゲノムサイズは芽殖孤虫の方が18%ほど小さかったが、推定遺伝子数も芽殖孤虫15,492個に対してマンソン裂頭条虫17,868個と、芽殖孤虫の方が2,376個(約13%)少なかった。ゲノムに占めるリピート部分はどちらもゲノムの55%程度で、特にLINEが、芽殖孤虫でゲノムの26.3%、マンソン裂頭条虫は31.9%と多いのが特徴的であった。これは、これまでに知られている円葉類条虫(多包条虫、単包条虫、有鉤条虫、Hymenolepis microstoma)との大きな違いである。一方、SINEおよびLTR型レトロトランスポゾンは、芽殖孤虫とマンソン裂頭条虫ではどちらのゲノムでも1~2%であった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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