研究課題
本研究は動物園水族館(以下,園館)に蔓延している(あるいは、と考えられる)寄生虫病の現状把握を行う事が目的である。多くの寄生虫は検疫対象ではなく、動物と伴に直輸入されているので、突飛なことではないが、園館動物は多様な寄生虫の「宝庫」である。しかし、この分野の体系的調査・研究は我々のものが初めてであり、その結果、多くの園館から信頼を得、また、浅川が管理・運営するする文科省私立大学学術研究高度化推進事業で2004年に設立された酪農学園大学野生動物医学センターが、日本野生動物医学会野生生物蠕虫症センターに認定された。本研究はこれらを基に発展的展開を期され、実際、2014(H26)年度も多くの成果を得た。当該年度園館で飼育展示される動物については内外寄生虫の診断依頼があった(約30件)。その中から、飼育展示(ジンベイザメなど)における健康管理および希少種繁殖事業(タンチョウなど)において問題視される寄生虫病を経験した(前者ではチョウ類、後者では気管開嘴虫類)。鰭脚類のハイダニ症のようにヒトに寄生する可能性のある種も経験し、診断を返すと伴に、国際学会などの国内大会での口頭発表や専門誌等への公表を行い、公衆衛生学的にも重要な貢献をした。2011年3月の東日本大震災の被災地・石巻での野生動物調査も実施し、捕獲調査ではハツカネズミを得たが、既に大発生の次期は過ぎており、ハツカネズミ1個体が得られたのみであった。特用家畜としては東京農業大学網走校で飼育されるエミューについて食肉に供された個体の内臓・消化管20個体の蠕虫検査を実施したが、陰性結果であった。野生動物の害獣問題としてニホンジカ(エゾシカ含む)が社会的に注目されている。我々の研究でもこの種の寄生虫の診断依頼が多く寄せられた。現状ではヒトに直接健康被害をもたらす寄生虫の発見は無かった。このことにより、現場で活躍する狩猟者への心理的な不安を払拭することができた。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究は動物園水族館(以下,園館)に蔓延している(あるいは、と考えられる)寄生虫病の現状把握を行う事が目的である。研究計画の進め方として、Ⅰ:疫学調査 <H26-29園館実地調査、H26-29診断検査 、H26-30継続分析・公表・寄生虫の継代>Ⅱ:寄生虫分析 <H27-30形態・病理・分子などの分析、フィードバック調査(個々の診断・疫学データにより、モデルとして適切であるとされた宿主・寄生体関係の例を中心に)>Ⅲ:中間報告・総括<H27およびH30 それぞれの年度で報告書作成・関連機関(協力園館・大学・博物館など)への送付、シンポジウム企画・国内外の学会・研究会発表・一般書の作成>が予定されていた。前述したように、2014(H26)年度において多くの成果を得たことから、当初の計画通りであると判断されたので、当該区分となった。
計画によると、今年度も継続されるものとして園館実地調査、診断検査 、継続分析・公表に加え、モデルの寄生虫についてはその継代も試みたい。これに加え、H27からは寄生虫分析(形態・病理・分子などの分析)、フィードバック調査(個々の診断・疫学データにより、モデルとして適切であるとされた宿主・寄生体関係の例を中心に)が開始される予定であるので、出来うる範囲でこれに着手したい。さらに、本年度は中間報告を行うので、関連報告書作成、関連機関(協力園館・大学・博物館など)への送付、シンポジウム企画・国内外の学会(10月、ミャンマーで開催のアジア野生動物医学会大会)・研究会発表(寄生虫学会、獣医学会、衛生動物学会、蠕虫研究会など)・一般書作成も同時進行で行いたい。具体的には2015年7月から8月にかけ、本学を舞台に第21回野生動物医学会江別大会を、浅川が運営をする。この中でこの研究の総括を行うような集会を検討している。また、書籍としては、野生動物の餌付け問題や日本生態学会の感染症関連の次のような一般書2点が刊行される予定である;感染症の生態学(共立出版).野生動物との軋轢を回避するために-保全生態学的アプローチからの餌付け問題(地人書館)。刊行実績については、今年度、本学大学院では査読付きの専門誌Research of One Healthが創刊された。この専門誌こそ本研究の中心課題「保全医学」を具現化したもので、本計画で得られた2本の論文がネット上に公開されている(後述)。今後も他の専門誌への投稿と平行して、本誌を盛り立てたい。なお、啓発事業ひらめき☆ときめきサイエンスも実施予定であることを付記する。
購入予定だった消耗品の一部を次年度へ回したため。
国内各地の園館実地調査や中間報告を行うための国内外の学会(アジア野生動物医学会など)出張で多くが使用される予定である。寄生虫病関連の消耗品や論文刊行のための費用も支弁される予定である。基金化を含め、概して2014年度内容と大きく外れることはないことが考えられた。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (45件) (うち査読あり 18件) 学会発表 (48件) (うち招待講演 3件) 図書 (4件) 備考 (1件)
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