研究課題/領域番号 |
26460515
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マラリア / 薬剤耐性 / 進化 / 地理的拡散 / 集団遺伝学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、流行地を網羅する17カ国36集団の熱帯熱マラリア原虫を用いて、薬剤耐性マラリア原虫が耐性起源地からアフリカに至り、大陸内を拡散する経路を解明することである。本年度の成果として、原虫遺伝子が薬剤による正の選択により、どの程度影響を受けるかについて検討した。まず、パプアニューギニアから得られた検体では、サルファドキシン耐性をしめす変異型dhpsアリル頻度が、治療政策の変更直後である2002/3年の0%から2010年には64%まで急上昇していることを確認、このような急激な耐性原虫の選択が、どの程度原虫遺伝子に影響を与えるのかについて検討を試みた。手法としては、薬剤耐性遺伝子と連鎖しない10箇所のマイクロサテライト座位における多型を決定後、各種集団遺伝学的パラメーター解析およびSTRUCTUREによるベイズモデルを用いたクラスタリングをおこなった。これらの結果から、遺伝的多様度および集団構造の違いが生じているのか検討した。その結果、 1.STRUCTURE解析では分集団数(k)はK=2の時に最大対数尤度となり、集団構造の違いは認められなかった。 2.ヘテロ接合度の期待値にも両集団間で、は0.59(2002/3年)、0.571(2010年)と有意な差はなかった。 3.全220例中61例(28%)でいずれかのマイクロサテライト座位において複数アレルが見られ、当地におけるマラリアの近交系数は72%と推定された。 以上の結果は、比較的高い自殖率のもとで急速に選択された耐性原虫は、新たな分集団を作成するほどの影響を、原虫集団に与えることはできず、本集団の遺伝的多様性も低下させなかったことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成する手法の妥当性について検討した。その結果、当初考えていた方法では不十分なことがあきらかになったが、より少ないデータで解析しうる感触をつかむことができた。
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今後の研究の推進方策 |
非常に選択の強い状況であっても、耐性遺伝子の近傍を除けば、選択の影響は消失することが本年度の検討であきらかになった。次年度からは、以下の手法で研究を進めていく。 1.耐性遺伝子の近傍のマーカーに限定して解析する。 2.集団構造の解析は中立なマイクロサテライトマーカーでおこなう。 3.新規のアルテミシニン耐性関連遺伝子として同定されたK13の遺伝学的特徴について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定していた解析座位数より少ない座位数で研究目的を達成しうることがわかったため、計上していた遺伝子解析費用が不必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シークエンサーによる全ゲノム解析を実施し、SNPsとマイクロサテライトマーカーの相関を見ていく。
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