赤痢アメーバ症はわが国では年々増加傾向にある。早期に診断を確定するためにも、有用な血清診断法の開発が求められている。本研究では、蛍光物質を内包したシリカナノ粒子の表面に赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)Gal/GalNAc lectin intermediate subunitのC末端側組換えタンパク質(C-Igl)を結合させ、一方、メンブレン上にもC-Iglを線状に塗布してイムノクロマトキットを作製した。今年度は、赤痢アメーバ症患者血清、健常人血清の検体数を増やすとともに、他の原虫感染症(ジアルジア症、ヒトブラストシスチス症、トキソプラズマ症、マラリア、リーシュマニア症、シャーガス病など)や細菌感染症(クロストリジウム・ディフィシル感染症)の患者血清を用いて評価を行った。血清は20μlを使用し、30分後に判定した。その結果、蛍光イムノクロマト法による抗体検出系の高い特異性と感度を確認することができた。中でも、同じEntamoeba属であるE. gingivalis感染者の血清は、間接蛍光抗体法では抗赤痢アメーバ抗体が陽性であったが、本イムノクロマト法では陰性と判定された。また、異なる時期に作製したイムノクロマトキットについて、ロット間の比較を行った。ロット間で蛍光のピーク出現位置が僅かに異なり、小型蛍光リーダーでの測定値に影響が見られるケースがあった。しかし、スキャンした蛍光強度の波形には大きな差がなかったことから、対応は可能であると考えられた。研究期間を通じて、赤痢アメーバ症の確定診断のために迅速で簡便に実施でき、しかも高感度で特異性の高い新規の血清診断法を開発することができた。
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