研究課題/領域番号 |
26460521
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
永田 年 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90275024)
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研究分担者 |
榎本 紀之 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50436961)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザ菌 / 気道上皮細胞 / ビトロネクチン / プロテインE |
研究実績の概要 |
平成26年度にNTHiの気道上皮細胞内に侵入することをヒト気道上皮細胞株であるBEAS-2B細胞株を用いて確認した。平成27年度は、細胞内侵入の分子機構について研究をおこなった。 NTHi菌株として、ATCC保存株1種(ATCC19418)および浜松医科大学附属病院臨床分離株1種 (HUSM0481)を用いた。BEAS-2B細胞にNTHiを感染させた2時間後に、ゲンタマイシン処理にて細胞外細菌を殺滅した。蛍光染色後の顕微鏡観察にて、細胞内侵入菌数を計数した。また細胞内の生存細菌数は、NTHi感染細胞を回収しそれをチョコレート寒天平板培地に塗布して1晩培養後のコロニー数を計数することでも評価した(平板プレート法)。またビトロネクチンが、NTHiの細胞表面への付着、細胞内侵入に関与していることを確認するため、プラスチックプレートにコートしたビトロネクチンにNTHiが付着するか検討した。その結果、NTHiは、ビトロネクチンに付着することを確認した。この付着はNTHiのプロテインEの84-108番目のアミノ酸からなるペプチド (PE84-108) の前処理で阻害された。この阻害の程度はPE84-108ペプチドの濃度依存的であった。同様に、NTHiのBEAS-2B細胞内への侵入も、PE84-108ペプチドの濃度依存的に阻害された。このことから、NTHiの気道上皮細胞への侵入は、宿主のビトロネクチン、NTHiのプロテインEが関与した過程であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
使用した2菌種 (ATCC19418, HUSM0481) が気道上皮細胞株であるBEAS-2B細胞に侵入することを確認した。その侵入機構の解析をおこなったところ、NTHiの気道上皮細胞への侵入には、宿主のビトロネクチン、NTHiのプロテインEが関与した過程であることが明らかとなった。特にプロテインEの84-108番目のアミノ酸部分が、気道上皮細胞への接着・侵入に関与していた。この結果を、論文としてまとめた。 (Ikeda M, Enomoto N*, Nagata T, et al.: Nontypeable Haemophilus influenzae exploits the interaction between protein-E and vitronectin for the adherence and invasion to bronchial epithelial cells. BMC Microbiology, 15:263, 2015)
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている、NTHiの気道上皮細胞への付着、細胞内侵入のメカニズムを利用して、COPDや肺炎の増悪防止のためのワクチンを検討する予定である。マウスのNTHi感染実験により、NTHiのプロテインEの84-108番目のアミノ酸からなるペプチド (PE84-108) の過剰発現あるいはそれに対する阻害抗体の誘導を試みる。さらにNTHiの細胞表面タンパクであるP6遺伝子、P6ペプチドを調製し、マウスを用いて、P6抗原に対する免疫応答、特に細胞傷害性T細胞 (CTL)の誘導について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の実験試薬は主に既存のものを使用したためその経費があまりかかっていない。なお平成27年度は、ゲル撮影装置を新規購入した。平成28年度は、上記の実験を行うために、実験試薬等の購入に研究費を充てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、研究費を以下のものの購入に充てる予定である。細菌・細胞培養器材、マウス飼育費、培地等、実験用器材(プラスチック器具等)、ペプチドの合成費、学会旅費、論文校正費。
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