研究課題
本研究は、細菌感染におけるインフラマソームの活性化誘導機序および病態形成における役割の解明を目指して実施されている。マウスのリステリア感染モデルにおいて、感染マウスをアンピシリンで治療する際、インフラマソームが菌の排除を促進していることを新たに明らかにした。In vitroのリステリア感染マクロファージを用いた解析結果から、AIM2インフラマソームを介したパイロトーシスがアンピシリン処理による菌の排除を促進することがわかった。これまで解析を進めてきた肺炎球菌感染の経鼻感染モデルにおいて、前回までにインフラマソーム構成タンパクであるNLRP3とASCが複数の粘膜防御タンパクの発現を促進して宿主防御に貢献することが明らかになっていたが、今回、それら粘膜防御タンパクの発現を正に制御するSTAT6の活性化がNLRP3とASCによって促進される可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
今年度、肺炎球菌感染の経鼻感染モデルにおいてNLRP3とASCが粘膜防御タンパクの発現を促進する機序の解明を目的にしていた。NLRP3とASCがSTAT6の活性化に関わることが明らかになり、その機序解明に大きく前進した。また、新たにリステリア感染の抗菌薬治療におけるインフラマソームの役割を発見することができ、予想外の新たな研究課題を見出した。
NLRP3とASCがどのような機序でSTAT6を活性化させるか解明する。強制発現系を用いたレポーターアッセイでNLRP3とASCがcell-autonomousにSTAT6を活性化するか否かを判断する。Cell-autonomouである場合はNLRP3とASCがSTAT6と複合体を形成する可能性などを検討する。一方、Cell-autonomouではない場合、NLRP3とASCが何らかのサイトカインの産生を介してSTAT6の活性化を亢進すると考えらえる。そのようなサイトカインの候補としてIL-33に注目しており、その受容体であるST2の欠損マウスを用いて関与を調べる。前年までにAIM2インフラマソームがアンピシリンを用いたリステリア感染マクロファージから菌の除去に関わることを直接的証拠で示すことができた。しかし、パイロトーシスの関与は間接的な証拠に依存している。最近、GSDMDがパイロトーシスの主要なメディエーターであることが報告されたため、GSDMD欠損マクロファーを用いてパイロトーシスの関与を検討する。
本研究によるインフラマソーム構成タンパクの新たな肺炎球菌感染防御における役割の発見は非常に意義深いと考えられるため、この研究成果をまとめた論文をハイ・インパクト・ジャーナルに投稿している。しかし、論文受理までには未だ至らず、そのため論文掲載にかかる費用として予定していた額が未使用のままである。また、新しい研究機関に移動した直後であり、スタートアップに時間をとられたため予定していた実験をの一部を実施できなかった。その分、次年度使用額が生じた。
研究結果をまとめた論文を科学誌に掲載させる。その費用として使用する。また、前年度に実施できなかった粘膜防御因子の定量を行う。そのための試薬を購入する予定である。
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