研究課題
病原性細菌を含む多様な炎症誘導因子がカスパーゼ-1の活性化を誘導する。この自然免疫応答の中心的役割を担うのがインフラマソームと呼ばれるタンパク複合体である。インフラマソームは自然免疫受容体、カスパーゼ-1前駆体、アダプタータンパクASCによって構成され、カスパーゼ-1活性化の場として働く。しかしながら、我々は肺炎球菌の経鼻感染モデルにおいて自然免疫受容体(NLRP3)およびASCが宿主防御に寄与するがカスパーゼ-1は必須ではないことを見出した。これは、インフラマソーム構成タンパクがカスパーゼ-1活性化以外の経路を介して防御的に働く可能性を示唆しているため、その分子機序の解明を目指した。その結果、カスパーゼ-1下流のエフェクターであるIL-1やIL-18の産生ではNLRP3 の防御的役割を説明できないことがわかった。そこで、DNAマイクロアレイを用い、肺炎球菌感染時の肺においてNLRP3およびASCに依存的且つカスパーゼ-1非依存的に発現する遺伝子を探索したところ、複数の粘膜防御因子の発現がこの条件と一致することがわかった。それらの粘膜防御因子のうち、TFF2が肺炎球菌感染で防御的に働くこと、およびintelectin-1が肺炎球菌に結合することが示唆された。これらの粘膜防御因子の発現がNLRP3およびASCに依存する機序を調べたところ、NLRP3とASCが転写因子STAT6の活性化を延長させることでSTAT6依存的に発現する転写因子SPDEFの発現を維持し、SPDEFが直接的あるいは杯細胞の分化を介して粘膜防御因子の発現維持に寄与する可能性が示唆された。
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Infect Immun.
巻: 85 ページ: pii: e00201-17
doi: 10.1128/IAI.00201-17.