本研究課題の目的はラットへの感染過程で高発現する気管支敗血症菌特異的な遺伝子の感染成立における役割を解明することである。昨年度までにゲノム解析もされた本菌種の代表株であるRB50株の転写制御遺伝子、鉄関連遺伝子群の欠損が本菌のラット気管への感染定着能を低下させることを見出していた。また、気管支敗血症菌株と類縁菌種である百日咳菌、類百日咳菌を用いた比較ゲノム解析から、気管支敗血症菌特異的な7つの遺伝子塊領域を見出した。7つの遺伝子塊をそれぞれ欠損させた気管支敗血症菌株を作製して、ラット感染モデルに供したところ、いずれの欠損株の感染定着能も野生株と同等であることが確認され、遺伝子塊が単純に気管支敗血症菌の感染能を規定しているわけではないことを明らかにした。本年度は気管支敗血症菌と類縁菌種の遺伝子のアミノ酸配列の違いに注目して比較ゲノム解析を進め、菌種間で保存されるアミノ酸置換を見出すことができた。特に気管支敗血症菌を含むボルデテラ属の主要な病原性因子である繊毛、毒素、付着因子等に菌種特異的なアミノ酸置換が見出されたので、推定される機能別に解析を進めて感染過程への関与を調べる準備を整えることができた。
|