研究課題/領域番号 |
26460526
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松田 重輝 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (30506499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸炎ビブリオ / 3型分泌装置 / エフェクター / 細胞死 |
研究実績の概要 |
食中毒原因菌である腸炎ビブリオは、標的細胞に対して感染後数時間以内に細胞死を誘導する、細胞毒性を示す。この細胞毒性には本菌の3型分泌装置1(T3SS1)により分泌されるエフェクター(VepA、VopS)が重要であるが、これらエフェクターの作用機序は不明な点が多い。本研究課題では、これらエフェクターの作用の分子メカニズムを解析することで、腸炎ビブリオのT3SS1による細胞死誘導機構の解明を目的としている。 本年度はVepAのトランケート体を作製し、酵母に発現させて毒性を評価した。C末端側の欠失体では毒性が消失する一方で、VepAの分泌シグナルおよびシャペロン結合部位であるN末端側の欠失体は毒性に影響しなかった。これらトランケート体の培養細胞での局在を評価した。また、VepAの標的分子であるV-ATPase V0cの機能に関与する部位の変異体を発現する酵母を作製した。これらV0c変異体発現酵母のVepAの毒性に対する抵抗性を評価した。 またVopSのトランケート体を作製し、培養細胞に発現させて局在を評価することで、形質膜局在に必要な領域の絞り込みを行った。VopSのAMP化活性部位の変異体を培養細胞に発現させると、細胞の形態変化が観察された。このことから、VopSによるAMP化非依存的な細胞形態変化機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リソソームを標的とするエフェクターVepAの解析については、VepAまたは標的分子であるV-ATPase V0cの変異体を作製し毒性および局在を評価したが、リソソーム局在部位については特定に至っていない。一方、VopSについてはトランケート体を作製し、培養細胞に発現させて局在を評価することで、形質膜局在に必要な領域を絞り込むことができた。また解析の過程でVopSによるAMP化活性に非依存的な細胞形態変化を見出すことができた。以上より、VopSに関する解析は比較的順調に進展したものの、VepAに関する解析の進捗は芳しくないことから、総合的に当初の研究計画よりやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
VepAについては引き続き毒性に関与する部位およびリソソーム局在領域を探索する。また取得した変異体のリソソームに対する作用を解析することで、VepAとV0cの関係を考察する。VopSについては形質膜局在領域が標的とする分子について解析する。また、26年度に見出したAMP化活性に非依存的な細胞形態変化について、さらなる検討を行う予定である。その際に、以前に同定したVopS結合タンパク質について、細胞形態変化および形質膜局在化への関与を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
VepAの変異体解析に時間を要したこと、一部試薬について在庫切れにより納入が本年度に間に合わなかったこともあり、一部の解析が26年度中に完了しなかった。また、本年度は成果の学会発表に至らず、当初の予定より旅費の支出が少なくなったこともあり、26年度研究費に未使用額が生じることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に生じた未使用額について、次年度に繰り越して使用する。本年度に納入が間に合わなかった試薬を次年度に購入し、26年度中に未了となったVepAについての解析を27年度中に行う。また、成果発表(学会発表など)を適宜行う予定である。
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