研究課題
主要な食中毒原因細菌である腸炎ビブリオを培養細胞に感染させると、感染後数時間以内に細胞の形態変化および細胞死を誘導する、強い細胞毒性を示す。本菌は病原因子として2種類の3型分泌装置(T3SS1およびT3SS2)を有することが知られているが、この細胞毒性はT3SS1依存的であり、VepA、VopS などのT3SS1により宿主細胞に注入されるエフェクター群が重要であると考えられている。一方で、これらエフェクターの作用機序および細胞毒性機構には不明な点が多い。本研究ではT3SS1エフェクターによる細胞毒性発現機構について、その細胞内局在および局在を規定する領域の解析を行ってきた。VopSのAMP化不活性変異体による細胞への毒性発現について、これまでに同定したVopSの宿主側相互作用タンパク質の関与を検討したが、候補タンパク質はAMP化活性非依存的な毒性発現に関与しないと考えられた。AMP化活性に非依存的な細胞への毒性発現はN末側の形質膜局在ドメインの欠失により消失する。一方で、N末側形質膜局在ドメインのみでは毒性はみられないことから、毒性発現にはC末側ドメインが形質膜へ局在し機能を発揮する必要があると考えられた。また、本年度にVopSの形質膜局在化領域を用い、他のタンパク質の選択的ターゲティングを試行した。GFPタンパク質などにVopS形質膜局在領域を融合させ、HeLa細胞内における局在を観察することで、他のタンパク質を形質膜に送達可能であることを確認した。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Biochem Biophys Res Commun
巻: 480 ページ: 261-267
10.1016/j.bbrc.2016.10.042