研究課題/領域番号 |
26460528
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
友安 俊文 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20323404)
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研究分担者 |
田端 厚之 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10432767)
長宗 秀明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40189163)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 連鎖球菌 / 病原性 / グリコシダーゼ / 細胞溶解毒素 / 発現調節 |
研究実績の概要 |
インターメディリシン(ILY)は,Streptococcus intermedius (SI)の主要病原因子である。この毒素をコードするily遺伝子の発現は,カタボライト抑制因子CcpAやガラクトース代謝に関わる遺伝子群が存在するlacオペロンのリプレッサーであるLacRによって抑制される。よって,生育環境中にガラクトースが存在するとily発現抑制が解除される。また,lacオペロン中には,β-Galactosidaseやβ-N-Acetylhexosaminidase活性などを保有する分泌型の新規グリコシダーゼMsgAをコードする領域が存在する。我々は,ccpA破壊株を用いることによりMsgAの産生もCcpAによるカタボライト抑制されることを確認した。また,この菌はAGSの中で唯一シアリダーゼ(NanA)を保有していることが報告されている。興味深いことに,SIをウシ胎児血清中(FBS)で培養するとILY産生量が飛躍的に増加する。そこで,この増加にMsgAやNanAによる糖鎖分解産物に含まれるガラクトースが関わっているのでは無いかと考え解析を行った。まず,SIから分泌されたMsgAの精製を行った。また,MsgAに2箇所存在するグリコシダーゼ活性に関わるドメインを分割した断片やNanAにHis-tagを付加し大腸菌内で過剰産生させることで大量精製に成功した。これら精製タンパク質を用いて,Km値などの種々の酵素反応パラメーターの決定や抗体の作製を行った。さらに,msgA破壊株だけではなくnanA破壊株を,FBS中で培養してもILY高産生は起こらないこと,精製MsgAとNanA両方をFBSに添加した場合のみILY発現に充分なガラクトースが生成することを明らかにした。これら結果から,MsgAとNanAがILY産生量を調節することでSIの病原性を制御している可能性が高いことを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SIのMsgAやNanAの精製,酵素反応パラメーターを決定,抗MsgA抗体や抗NanA抗体の作製に成功した。また,MsgAの発現がCcpAによって制御されている可能性が高いことも明らかにすることが出来た。さらに,グリコシダーゼ遺伝子破壊株や精製タンパク質を用いた解析から,FBSでSIを培養した際に認められるILY産生量の増加がNanAとMsgAによる糖鎖分解産物であるガラクトースの可能性が高いことが分かった。このように,平成26年度に予定した実験の殆どを行うことが出来た。上記の結果から,MsgAやNanAなどのグリコシダーゼがSIの病原性発現に関与している可能性が高くなり,順調に研究が進展していると考えられる。しかしながら,まだデータとして不十分な部分もあり,より詳細な解析を続けて行く計画である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,以下の研究を進めることで,SIのグリコシダーゼによる病原性発現機構と生体に存在する感染防御機構を明らかにする計画である。 [ily発現制御領域の探索] ily発現は,CcpAやLacRにより制御されていることを明らかにしている。ilyプロモーター領域(Pily)にはCcpA結合配列は存在しているのであるが,LacRはPily に結合するにも関わらずこの領域にLacR結合配列と強い相同性を保有する配列は確認されていない。そこで,PilyのどこにLacRが結合するのかについて,ilyプロモーター領域に点・欠失変異などの挿入やプルダウンアッセイを行うことにより決定する。さらに,LacR以外のily発現制御因子の探索も並行して行う。 [糖タンパク質の糖鎖分解産物がILY発現に及ぼす影響] FBSに含まれる糖タンパク質を添加した条件でSIの培養をするとily発現量がどのように変化するかについて解析する。 [ヒト血漿によるily発現調節機構の解明] 我々は,ヒトの血漿に含まれる成分によりILY活性やFBSによるily発現活性化が抑制されることを明らかにしている。また予備実験的に,この効果がイムノグロブリンによるものである可能性が高いという結果も得ている。そこで,イムノグロブリンがILY活性や ily発現調節に関わるNanAやMsgAの活性を阻害するかどうかについて解析する。さらに,この抑制効果に個人差が存在するかどうかについても明らかにする。 [グリコシダーゼ変異株の細胞毒性についての解析] msgA破壊株やnanA破壊株をHepG2などのヒト由来培養細胞に感染させることにより,これら変異株の細胞付着性,細胞侵入性,細胞毒性を野生株と比較する。また,細胞付着性や細胞侵入性の解析を容易にする為に蛍光タンパク質を細胞内で発現させた蛍光SI株の作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金322,903円のうち300240円については3月中に人工遺伝子合成やS. intermedius 強毒株のゲノム配列決定に使用したが,支払いが4月となったため。22,663円については購入した消耗品が,キャンペーンなどにより予定より安価となったため差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
残金322,903円のうち300240円については4月に支払いが完了する予定である。 22,663円は,平成27年度に予定しているily発現制御領域の探索の為の研究に必要な,DNAプライマーの購入に使用する予定である。
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