腸炎ビブリオの3型分泌装置が分泌するエフェクタータンパクVopQによるカスパーゼ-1の活性化抑制機構を解明するために最終年度はオートファジーの関連性について検討した。 これまでの実験で腸炎ビブリオを野生型マウス由来マクロファージに感染させると、エフェクタータンパクVopQがカスパーゼ-1活性化を阻害することが、VopQ欠損株との比較により確認された。しかし、このカスパーゼ-1活性化抑制のメカニズムはVopQがオートファジーを誘導する為に、見かけ上カスパーゼ-1の活性化が抑制されているのではないかとの疑問が残った。そこで、マクロファージなど部位特異的に発現するようにLyz2-Creを導入した ATG5欠損コンディショナルノックアウトマウスを用いることでオートファジーとVopQの関連性を明らかにしようと試みた。ATG5欠損コンディショナルノックアウトマウス由来のマクロファージに、腸炎ビブリオ野生株とVopQ欠損株を感染させたところ、LC3-IからLC3-IIへの移行は見られなかった。しかし、カスパーゼ-1の活性化の違いにおいて野生型マウス由来マクロファージと比較して明らかな差が見られなかったため、オートファジーに関してもATG5欠損だけでは説明できない複雑な経路が存在すると考えられた。 また、これまでの実験ではVopQはNLRP3欠損マウス由来マクロファージでカスパーゼ-1活性化抑制がみられたので、NLRC4またはNAIP5の関与が示唆された。NLRC4とNAIP5単独欠損マウスでの検証も行ったが、NLRP3またはNLRC4のNAIP5二重欠損マウスの作成までには至らなかったため、どの経路でVopQが関与しているかの結論には至らなかった。
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