研究課題/領域番号 |
26460533
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山崎 伸二 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (70221653)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | コリックストキシン / コレラ菌 / ADP-リボシルトランスフェラーゼ |
研究実績の概要 |
コリックストキシン(ChxA)のコレラ菌における病原因子としての重要性を明らかにするため、ChxAを定量できるBead-ELISAを構築し、様々なコレラ菌のChxAの発現量を測定した。さらに、昨年度見出した新たなChxAバリアントであるChxAIVの精製毒素量を増やし,細胞毒性を示すかどうかについて調べた。 まず、精製ChxAIをウサギに免疫し、抗体を精製後、pgレベルでChxAを検出できるBead-ELISAの系を構築した。その結果、400 pg/mLから12.8 ng/mLの範囲で定量可能であった。ChxAI、II、III産生株をそれぞれ18、8、3株選び、アルカリペプトン水(APW)で培養後それぞれのChxA産生量を定量した。ChxAIでは、最も産生量の少ない株では1.0 ng/mL、最も産生量の多い株では1.5 ug/mLであった。ChxAIIでは、最も産生量の少ない株では90 ng/mL、最も産生量の多い株では1.6 ug/mLであった。ChxAIIIでは、3株とも産生量が少なく、2から4 ng/mLの範囲であった。興味深いことに、LB培地、AKI培地とAPWの3種類を用いて培養した場合、ChxAの産生量は3種類の培地で異なった。全般にLB培地での産生量が最も高く、APWと比べ、1.5倍から30倍程度増加した。一方、AKI培地ではAPWと比べ20から60%程度減少したが、2.6倍増加した株も存在した。 ChxAIVについては、25 ug/mLから320 ug/mLまで毒素量を増やすことで細胞毒性を認めることができた。ChxAは触媒ドメイン、受容体結合ドメインと膜貫通ドメインからなっている。そこで、ChxAIとChxAIVの各ドメインのキメラ毒素を作製し、ChxAIVの活性が低い原因がどこのドメインであるかについて調べた。ChxAIVはChxAIと比べ128倍毒性が低かったが、ChxAIの各ドメインをChxAIVに置き換えても2倍しか毒性が低下しなかった。2つのドメインを置き換えても8倍しか低下しなかった。すなわち、ChxAIVの活性が著しく低い原因は、それぞれのドメイン構造の違いに基づく可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ChxAI、ChxAII、ChxAIII、ChxAIVを定量できるBead-ELISAの系を構築し、1.6 ug/mLの高産生株から2.0 ng/mLの低産生株など様々な株が存在することを明らかとできた。さらに培地の種類によって産生量が大きく変化する株もを存在し、ChxAの転写レベルあるいは翻訳レベルでの調節機構が株に寄って異なることも明らかとすることができた。さらに、我が国の敗血症由来のnon-O1/non-O139コレラ菌で見いだした新規のChxAIVバリアントも320 ug/mLまで毒素量を増やすと細胞を毒性を確認でき、キメラ毒素による解析から個々のドメインの影響よりも全体の立体構造の変化が活性低下に関わっている可能性を示すことができ、おおむね予定どおり研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、bead-ELISAでChxA高産生性となった株のchxA遺伝子ノックアウト株を作製し、ChxA高産生性株とchxA遺伝子ノックアウト株、あるいはChxA低産生株を用いてマウスを用いた動物実験によりChxAの病原因子としての重要性を明らかとして行く予定である。さらに、ChxAIVの毒性が低い理由、言い換えればChxAIVよりChxAIの毒性が強い理由を、ChxAIVを結晶化し、X-線構造解析により明らかとする予定である。
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