研究課題/領域番号 |
26460536
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
崔 龍洙 北里大学, 生命科学研究所, 教授 (50306932)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / 持続感染 / ゲノム逆位 / Flip-flop inversion / phenotype switching / heterogeneity / 多剤耐性 / MRSA |
研究実績の概要 |
本研究は、概ね3つステップで研究の推進を図っている。(i)モデル感染菌と持続感染モデルの構築又は充実;(ii)感染前と感染過程での菌と宿主の経時的な変化を徹底的に解析し、持続感染の成立に関与するファクターを同定する;(iii)遺伝子の欠損、相補、置換等の変異株を作製し、上記の結果を検証すると同時に、データマイニングにより持続感染成立の理論体系を構築する。 平成26年度では、第1ステップの計画を遂行した。申請当時の予備実験の結果を踏まえ、モデル感染菌(Flip-flop逆位構造を持つ)の選定が終わり、その細菌がin vitro培養条件下で表現型を安定にスイッチングすることが再現できた。また、感染実験前段階となる、in vivoを想定した培養条件下で、た例えばCO2やpHの調節した培養条件下で、SCVとLCVの親細胞からいずれも2種類の子孫細胞(SCVとLCV)が形成されることが確認できた。また、持続感染モデルの確認に用いるFlip-flop逆位構造破壊株の作成は進行中である。本細胞の作成は、相当組み替え手法で行うが、現在Knock out用のプラスミットの構築は完了した。感染実験のための細胞とマウスの選定や、細胞培養とマウス飼育条件検討も完了した。 本年度のもう一つの成果は、遺伝子転写解析である。持続感染に関与すると想定したSCV細胞とその細胞由来のLCV細胞間の全ゲノム遺伝子転写解析をmicroarrayを用いて行った。データはまだ解析中であるが、プレリミなりな結果として、主にSOSに関与する遺伝子系の転写がSCV細胞で亢進んしていたことが認められた。特に、stringent response代謝が持続感染に寄与することが示唆されている。RT-PCRなどで確認は必要ですが、この結果が新たな展開に繋がる可能性は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末に職場の異動がありました。その異動に伴い、初年度の研究計画実施に少々遅れが生じました。しかし、次年度(H27年度)からは、医学部の主任教授の立場でもあり、より積極的に当研究に取り込むのができ、当初の計画通り進行できることに確信します。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、感染細胞モデルの充実とマウス感染モデルの構築を実施する。そして、細菌、培養細胞並び感染モデルマウスの観察を行う。研究の焦点は、感染成立中の細菌の性状の変化、その遺伝学的背景を追求する。また、感染中後期における宿主と細菌の変化や、細菌の感染環境への応対機構を解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
職場の異動により、研究計画に少し遅延が起きっている。従って、予算の実行も遅れている。しかし、新職場は前職場に比べ研究環境が優れているので、当研究の全体計画は、順調に進められると確信する。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度からは、新職場で主任教授の立場にいることもあり、研究協力者に准教授一名、講師一名と助教一名、計3名を加わり、積極的に取り組みたい。予算の実行は、次年度のと合わせて、計画の通り随行していく予定である。
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