腸管出血性大腸菌O157(以下「O157」)を次世代シークエンサー(以下「NGS」)を分子疫学的解析に用いる場合、同一outbreak由来の菌株を同一と認識出来ることが重要であるが、これまでに同一outbreak由来菌株間でも複数の一塩基多型(以下「SNP」)が認められることが報告されている。しかしどの程度のSNPまでが同一outbreak由来菌株間で起こりえるのか、ということについてはこれまでに調査されていなかった。そこで、9株のO157を平板培地で3代継代培養を行い、各代で5個コロニーを釣菌してNGSで解析し、SNP発生状況を調査した。 SNP発生は、同一菌株のEscherichia coli K19株に保存されている領域であるbackbone領域、phageやtransoposonに由来する領域であるmobile elements領域及びその他のO157特有の領域であるO-island領域により発生する頻度が異なっていた。また供試菌株間でSNP数に有意差が確認された。これらのことから、同一outbreak由来菌株間で起こりえるSNP数についてはより多くの供試菌株を調査する必要があることが判明した。この内容については論文をpublishした。 本研究ではNGSをO157の分子疫学的解析に用いてdiffuse outbreakの発生状況を監視することを目標としていることから、過去2年間にNGS解析を実施したデータを上記の研究成果に基づき再解析を実施した。その結果、同一outbreakであるかどうかを判断するSNP数が決定可能となり、それを使用した解析によりoutbreak由来菌株は明瞭にクラスターを形成することが判明した。この内容については現在論文を投稿中である。
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