研究課題/領域番号 |
26460542
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
黒田 誠 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, センター長 (80317411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 川崎病 / メタゲノム / 腸内フローラ / 感染症 |
研究実績の概要 |
臨床検体からダイレクトにかつ網羅的に配列解読するメタゲノム解析により様々な病原体の発見が報告されている。我々はメタゲノム解析により川崎病患児の微生物フローラの経時的変化を追跡し、急性期と遠隔期においてどのような腸内細菌フローラの変動が見られるのか検討し、患児に生じている実像の理解を目的とした。川崎病患者28人について、入院時・半年後(十分な回復期)の2ポイントで便を採取し、次世代シークエンサーにより抽出DNAを用いて網羅的にメタゲノム解読を行った。得られた解読リードを megablast法にて NCBI nt データベースで検索し、MEGANにてTaxonomy 分類を行った。川崎病遠隔期(半年後)と入院時・急性期をLEfSe法にて比較分類した結果、遠隔期ではRuminococcus属の増加が顕著であり、回復における重要な因子である可能性が示唆された。科(family)・属(genus)レベルで分類しても川崎病に関連する優位な共通因子を特定できなかった。そこで種(species)レベルで分類した結果、Streptococcus mitis groupおよび患者由来のStreptococcus 分離株に顕著な検出率を認めた。メタゲノム・リードを用いて種レベルの分類は分解能が低いため通常行わない。しかしながら多様な特徴を内包する細菌群を属レベルの分類で留めることは S. pyogenes とS. thermophilus を同一に扱うのと等しいため、詳細な分類が効果的であったことが示唆された。本成果は以下の論文として掲載された(Kinumaki A, et al. Characterization of the gut microbiota of Kawasaki disease patients by metagenomic analysis. Front Microbiol. 2015 Aug 11)。微生物ゲノムデータベースが必要十分備わっている現状ではなく、日本人の腸内フローラの新菌属・種の分離同定を進め微生物データベースを拡充し、川崎病に関連の深い細菌属・種の特定精度の向上が肝要であると推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
川崎病患児の急性期便から有意に検出される細菌種を検出し、Streptococcus mitis groupに類する集団であるところまで推定できた。本成果は以下の論文として掲載された(Kinumaki A, Sekizuka T, Hamada H, Kato K, Yamashita A, Kuroda M. Characterization of the gut microbiota of Kawasaki disease patients by metagenomic analysis. Front Microbiol. 2015 Aug 11)。 微生物ゲノムデータベースが必要十分備わっている現状ではなく、日本人の腸内フローラの新菌属・種の分離同定を進め微生物データベースを拡充し、川崎病に関連の深い細菌属・種の特定精度の向上が肝要であると推測される。
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今後の研究の推進方策 |
川崎病発症に複合的な因子による炎症が原因であると作業仮説を立てた。 腸内フローラとして好ましくない菌群が大量に増殖しているところに、二次的な炎症(ウイルス感染症、ワクチン接種、熱傷等、実例報告から)が引き金を引いている可能性を想定している。この作業仮説を検証するために、マウスC57BL/6に硫酸デキストラン(DSS)を飲用投与にて1時的な腸管炎症を発生させ、川崎病患児から分離されたレンサ球菌株(7株)の追加投与により下痢症状等の発生を観察する。 患者検体のメタゲノム解読データには数多くの未同定配列(No hits)が含まれるため、日本人の健常者腸内フローラの新菌属・種の分離同定を進め、微生物データベースを拡充し、川崎病に関連の深い細菌属・種の特定精度を向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 若干の残額が出た理由として、論文投稿を優先したために学会発表を遂行できず、旅費計上相当額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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