研究実績の概要 |
臨床検体からダイレクトにかつ網羅的メタゲノム解析により様々な病原体の発見が報告されている。我々はメタゲノム解析により川崎病の微生物フローラの経時的変化を追跡し、急性期と遠隔期においてどのような腸内フローラの変動が見られるのか検討し、患児に生じている実像の理解を目的とした。川崎病患者28人について、入院時・半年後(充分な回復期)の2ポイントで便を採取し、次世代シークエンサーにより抽出DNAを用いて網羅的にメタゲノム解析を行った。得られた解読リードをmegablast法にて NCBI nt データベースで検索し、 MEGANにて Taxonomy分類を行った。川崎病遠隔期(半年後)と入院時・急性期を LEfSe法にて多変量解析した結果、遠隔期では Ruminococcus属の増加が顕著であり、回復における重要な因子である可能性が示唆された。科(family)・属(genus)レベルで分類しても川崎病に関連する優位な共通因子ができなかったため、更に精度をあげ種(species)レベルで分類した結果、Streptococcus mitis group および患者由来の Streptococcus 分離株に顕著な検出率を認めた。本成果は以下の論文として掲載された。(Kinumaki et. al., Front Microbiol. 2015 Aug 11;6:824. PMID: 26322033) 川崎病を4回再燃発症した患児の便からも同様に Streptococcus spp. が有意に検出され、直接的な因果関係を証明できてはいなが、上記成果と関連して新たな Streptococcus 属による発症・増悪の関与が示唆された。(Hamada H, et. al., JMM Case Rep. 2016 Feb 1;3(1):e005019. PMID: 28348750)
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