コレラ菌を人工海水中で4~6ヶ月間4度保存(マイクロコズム)し、アルカリペプトン水で37度培養しても増殖しなくなった状態をVBNCと定義した。VBNC化したマイクロコズムを遠心集菌し、カタラーゼを添加してPBS中で37度保温することで培養可能状態に転換する系を構築した。カタラーゼ添加後、数時間おきにサンプリングしてRNAを抽出し、RNAマイクロアレイを用いてVBNCから培養可能状態になる際の遺伝子発現変化を解析した(昨年度報告)。しかし変化を示す遺伝子が多すぎたことから、カタラーゼ非添加の陰性対照RNAもアレイ解析する必要があると判断した。ところがVBNCコレラ菌を遠心集菌しPBS中で37度保温しただけで培養可能状態に転換する菌があることがわかった。転換率はマイクロコズムにより異なるが、ときにカタラーゼ添加群と同等の転換率になる場合もあった。 この原因を確かめるためVBNC化したマイクロコズムを用いて、遠心による重力、37度での加温、ピペッティングによる物理的刺激などの影響を調べたが、全てVBNC状態を培養可能状態には転換しなかった。そこでVBNC菌を遠心集菌したものと集菌せずマイクロコズムのままのものとを37度に加温したところ、集菌した方のみが培養可能状態に転換した。したがって、集菌し過密状態になることによりVBNC状態から培養可能状態に転換することがわかった。そこでVBNC化したマイクロコズムを集菌せずにそのまま2分割し、カタラーゼ添加・非添加で37度加温し、サンプリング時に遠心集菌する方法に変更したところ、カタラーゼ非添加群での転換は完全に抑制された。今後このRNAを用いてマイクロアレイ解析を行う予定である。
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