細胞外小胞エキソソームは、マイクロRNA (miRNA)を含む様々な因子を標的細胞へ輸送することで多様な生理機能を示す。Epstein-Barrウイルス(EBV)はヒトγ-ヘルペスウイルスに属する普遍的な2本鎖DNAウイルスであり、B細胞および上皮細胞に特異的に感染し、がんを引き起こすことが知られている。EBVは、BARTならびにBHRF1の2つの領域にコードされる49種類のmiRNAを発現する。従来、EBV感染細胞から放出されるエキソソームが、miRNAをはじめとしたウイルス因子を標的細胞に運搬することが報告されているが、その生理的役割については不明な点が多い。研究代表者はこれまで、EBV感染B細胞から放出されるエキソソームを取り込んだ標的上皮細胞において、非感染細胞由来エキソソームと比較して、より顕著な細胞増殖および接着因子発現が誘導されることを明らかにした。本研究では、標的細胞におけるエキソソームの役割を分子レベルで解明することを目的として以下の検証を行った。 従来の報告から、EBV感染によって細胞内のmiRNA発現様式が変動することが知られているが、感染細胞から放出される細胞外小胞エキソソームに内包されるmiRNAの発現様式についてはほとんど報告がない。そこで本研究では、同一のバーキットリンパ腫患者から樹立された感染様式の異なるB細胞株を用いて、次世代シーケンシングにより、EBV感染がエキソソーム由来miRNAの発現様式に与える影響を検討した。その結果、EBV感染によってエキソソーム産生ならびにエキソソームに内包されるmiRNAの発現様式が変動することが明らかになった。以上の結果から、EBV感染細胞由来エキソソームに選択的に内包されるmiRNAが、標的細胞の形質変動において機能する可能性が示唆された。
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