研究課題
ピロリ菌とEBウイルスは、胃癌の発生に関与していると考えられている2つの病原微生物である。ピロリ菌は、1994年にWHOによりclass Iの発癌原因に分類された。Cag PAI、空胞化毒素VacA、細胞接着因子Bab Aなどが、それぞれ、細胞内シグナル伝達の撹乱、細胞障害、細菌の胃への定着などを介して発癌リスクを高める。一方、EBウイルスは約10%の胃癌の原因である。EBウイルス関連胃がんの90%以上がピロリ菌感染を伴っており、EBウイルス関連胃がんの発生が、ピロリ菌感染による炎症と密接な関係があると考えられた。申請者らはこれまでの研究で、ピロリ菌感染が胃上皮細胞の宿主細胞コンピテンシーを変化させ、EBウイルスの初感染、感染の拡大に働くことを細胞レベルで観察した。これまでの研究で、ピロリ菌野生株、cagA破壊株、vacA破壊株、cagA/vacA破壊株の間で、感染による毒素産生性とEBウイルス遺伝子発現量の変化に差は認められなかった。ピロリ菌毒素以外の菌体成分によるウイルスの感染増強作用と考えられた。病原体関連分子パターンのうち細胞表面に大量に存在するLPSをAGS-CD21細胞に処理してEBVを感染させると、EBウイルス遺伝子発現とEBウイルス感染細胞数の増加を認めた。大腸菌LPSおよびLipid Aを用いても同様の結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
胃上皮細胞でEBウイルス感染の拡大を促すピロリ菌の成分を分子レベルで明らかにすることができたため。
今年度はピロリ菌の責任分子に対する宿主細胞レセプターを明らかにするとともに、EBウイルスの増幅を促す分子メカニズムを明らかにする。これを発展させ、EBウイルス感染の拡大防止のための薬剤開発を目指す。
サンプル保存の為のフリーザーを購入する予定であったが、民間財団の助成金で購入することが可能になったため。
平成27年度に冷蔵保管庫を購入することとし、研究の推進に役立てる。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 20 ページ: 169-174
10.1016/j.jiac.2013.09.007
Cancers
巻: 6 ページ: 2259-2274
10.3390/cancers6042259
http://yoshiyama-lab.org