研究課題/領域番号 |
26460546
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
吉山 裕規 島根大学, 医学部, 教授 (10253147)
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研究分担者 |
多田納 豊 国際医療福祉大学, 薬学部, 講師 (70432614) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | EBウイルス関連胃がん / EBウイルス / ピロリ菌 / 微生物の共生 |
研究実績の概要 |
胃癌の発生に関与していると考えられている2つの病原微生物であるピロリ菌とEBウイルスは、それぞれ別々に、持続感染している胃上皮粘膜細胞を腫瘍化に導くと考えられてきた。それに対し、EBウイルス関連胃癌の症例は、殆どの例でピロリ菌感染を認めるという報告がなされた。これより、申請者はEBウイルス関連胃癌の発生にピロリ菌感染が果たしている役割を、実験的手法で明らかにすることにした。 昨年度までの研究では、EBV感染に感受性の胃上皮細胞であるAGS細胞をピロリ菌と接触させることによって、AGS細胞に感染するEBVが増加していることを観察した。ピロリ菌側の責任分子を明らかにするために、ピロリ菌の遺伝子破壊株などを用いることによって、上皮細胞に感染したEBVを増殖させるのは、ピロリ菌のリポポリサッカライド(LPS)であることを明らかにした。また、AGS細胞はToll-like Receptor(TLR) 2を発現していないことが明らかになり、ピロリ菌LPSはTLR2を介したシグナル伝達によってEBV増殖機構を活性化するものと考えられた。 今年度は、EBV感染増幅の分子機構の解明を行った。LPS処理と未処理の後にEBVを感染させ、EBVの増殖溶解感染を誘導するウイルスの転写因子であるBZLF1の増加を比較した。その結果、LPS処理によるBZLF1の転写の活性化は多くても5-6倍であり、誘導がかかっていると考えるよりは、単純にEBVゲノムの量が増加したことを反映しているに過ぎないと考えられた。一方、LPSで処理した胃上皮AGS細胞ではある種のインテグリン分子の転写量が増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者が新任地へ移動し、研究室のメンバーが入れ替わるとともに、研究環境の準備に時間を費やされたため。
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今後の研究の推進方策 |
ピロリ菌と接触させることにより、胃上皮AGS細胞に感染しているEBVが増加したことは、ウイルスのエントリー亢進であると考えられる結果を得ているが、AGS細胞においてこの分子をノックダウンすることで、感染効率が低下すること、逆に同分子の導入により感染効率が増加することを確認する。 また、LPS刺激はAGS細胞にインターフェロン産生を誘導するにもかかわらず、EBVの増殖が認められたことは、自然免疫シグナル伝達が撹乱されている可能性が高く、DNAマイクロアレイやqPCR法でmRNA発現量の変化を測定することで、責任アテニュエーター分子を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
定量PCR法を行うための酵素の購入費を最後まで残していたが、昨年度内の実験のためには十分量の備蓄があったため、使用期限や保存による酵素の劣化を考え購入を中止したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験計画では数多くの定量PCR法を行う予定になっており、酵素購入のための試薬代として必要であるため。
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