研究実績の概要 |
これまでに我々は、C型ウイルスのNS1が、A型のNS1とは異なり、mRNAのsplicingを促進することを明らかにしてきた。また、NS1は感染初期に核内に局在するが感染後期には主として細胞質に局在することから、核移行シグナル(NLS)と核外移行シグナル (NES)の存在が推測された。核外輸送受容体CRM1の認識配列(NESコンセンサス配列)に類似した配列が109-126位の領域に存在するので、この領域を欠失したNS1を発現したところ核内に蓄積したので、109-126位の領域が核外移行に関与することが明らかになった。しかし、NESコンセンサス配列である疎水性アミノ酸をアラニンに置換しても核外移行は阻害されなかったので、NESコンセンサス配列に類似した配列は核外移行に関与せず、コンセンサス配列以外のアミノ酸が核外移行に関与することが示唆された。 また、CRM1の阻害剤Leptomycin Bで核外移行が阻害されなかったことから、C型のNS1の核外移行はCRM1非依存性であることが明らかになった。 つぎにNLSの同定を試みた。NLSの候補として、塩基性アミノ酸のクラスターが36-46, 87-90, 167-171, 189-196位の4か所認められた。これらの欠失変異体を発現させたところ、 167-171位と189-196位の欠失で核移行が阻害されたので、167-171位と189-196位にNLSが存在することが明らかになった。これらの領域の塩基性アミノ酸をアラニンに置換した変異体を発現させて、その細胞内の挙動を解析した結果、170と171位の配列がNLSに必須であることが明らかになった。
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