研究課題
A型インフルエンザウイルス感染293細胞において、PB2分節からはPB2をコードするmRNA(PB2 mRNA)に加え、PB2 mRNAの一部の塩基配列が欠失したmRNA(新規mRNA)が発現することを見出した。欠失した塩基配列の5’および3’末端には、スプライスドナーサイトGUおよびアクセプターサイトAGがそれぞれ確認された。このことから、新規mRNAはPB2 mRNAをPre-mRNAとし、スプライシングを受けて成熟し、発現していると考えられた。この新規mRNAから、新規ウイルス蛋白質が翻訳されることがWestern blottingにより確認された。スプライシング反応に必須なドナーサイトおよびアクセプターサイトに変異を導入した変異型PB2をコードするプラスミドを293細胞に導入し、新規mRNAおよびそれから翻訳される新規ウイルス蛋白質が発現するかを確認したところ、変異型PB2からは新規mRNAおよび新規ウイルス蛋白質ともに発現しなかった。同様な結果は、ウイルスゲノムに変異を導入した変異インフルエンザウイルスを用いた解析においても確認された。新規mRNAのスプライスによる発現が、どの宿主の細胞で起こっているのかを検討するために、ヒト由来A549細胞、イヌ由来MDCK細胞およびマウス由来L929細胞にウイルスを感染させ、新規mRNAおよび新規ウイルス蛋白質の発現を検討した。これらの発現は、3種の細胞株において同様に確認された。よって、PB2 mRNAからスプライスにより発現する新規mRNAは、宿主に非依存的に発現することが示された。
2: おおむね順調に進展している
今年度に予定していた実験において、いくつかの困難はあったものの順調に結果を得ることが出来た。
本研究課題において、最も大切な新規ウイルス蛋白質の機能解析を来年度から開始する予定である。それに向けて必要なものを順序良く揃え、実験条件の検討を行っていきたいと考える。
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