研究課題/領域番号 |
26460553
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
北川 善紀 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00444448)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パラミクソウイルス / 自然免疫 / インターフェロン / TLR7/9 |
研究実績の概要 |
本研究は、パラミクソウイルスが有するIFN-α産生を阻害する能力を分子レベルで解析し、病原性発現における意義を解明することを目的とした。本研究課題では、IFN-αを大量に産生する形質細胞様樹状細胞に特異的なToll-like receptor(TLR)-7/9依存的シグナル伝達経路に対抗するパラミクソウイルスの阻害機構の解明を目指した。 本年度は、パラミクソウイルス科のセンダイウイルスがコードするV蛋白質によるTLR7/9依存性IFN-α産生経路阻害の分子機構について解析を行った。私たちは、IFN-α遺伝子の転写活性化に関わる転写因子IRF7が、センダイウイルスV蛋白質と特異的に結合することを見いだしていたので、まずIRF7に着目し解析を進めた。IRF7によるIFN-α産生誘導には、IRF7自身の核移行と二量体化が必須であることが知られている。そこで、両者に対してV蛋白質がどのように影響するか解析した。TLR7/9経路の上流分子(MyD88、TRAF6およびIKKα)を発現させるとIRF7の核移行が観察されるが、V蛋白質発現細胞では抑制されることが分かった。さらに二量体化についてもV蛋白質による抑制が認められた。こうしたIRF7の核移行や二量体形成は、上流シグナル分子からの修飾、特にリン酸化が引き金になるとの報告があることから、V蛋白質によるIRF7のリン酸化阻害について検討した。その結果、V蛋白質を発現させると、IRF7の活性化に必須であるとされる471位と472位のセリン残基のリン酸化が抑制されることが明らかになった。以上の結果から、センダイウイルスV蛋白質は、IRF7のリン酸化を抑制して活性化を防ぎ、その後の核移行や二量体形成を阻害すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画の通り、パラミクソウイルス科に属するセンダイウイルスについて、そのV蛋白質が有するTLR7/9依存性IFN-α産生阻害能を解析した。その結果は、「研究実績の概要」に記述したように、V蛋白質はIFN-α産生に関わる転写因子IRF7と結合し、そのリン酸化を抑制して、核への移行や二量体形成を阻害することが明らかになった。以上の点から、本年度の研究がおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の解析で明らかになったセンダイウイルスV蛋白質のTLR7/9経路阻害機構については、IRF7のリン酸化抑制がどのように行われているのかについて引き続き検討していく。また、当初の研究計画に従って、TLR7/9経路に対する阻害活性は認められるが、その機構が明らかになっていないニパウイルスおよび麻疹ウイルスのアクセサリー蛋白質について、その阻害機構の解析を行う。具体的には、まずセンダイウイルスV蛋白質で認められた阻害活性を共有しているかどうか検討を行う。もし、異なる阻害機構によるものであると判断された場合、各ウイルスのアクセサリー蛋白質の標的分子を検索するため、相互作用するTLR7/9経路上のシグナル分子を探索する。その後、各アクセサリー蛋白質が標的分子に対してどのように阻害するのかを調べるため、シグナル分子間の相互作用や、シグナル分子のリン酸化等の修飾、degradation、核移行等について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、ルーティンで使用する抗体の購入を計画し、その費用を25万円程度と見積もっていたが、使用条件を再検討することにより一回での使用量を減らすことができ、購入時期を遅らせることが可能になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費の多くは、研究を遂行するための消耗品の購入に使用する予定で、設備備品の購入の計画はない。また、研究成果を発表するために学会への参加にかかる費用、および論文の投稿にかかる経費に使用する。
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