研究課題
本研究は、パラミクソウイルスが有するIFN-α産生を阻害する能力を分子レベルで解析し、病原性発現における意義を解明することを目的とした。本研究課題では、IFN-αを大量に産生する形質細胞様樹状細胞に特異的なToll-like receptor(TLR)-7/9依存的シグナル伝達経路に対抗するパラミクソウイルスの阻害機構の解明を目指した。本年度は、パラミクソウイルス科のヒトメタニューモウイルスがコードするM2-2蛋白質によるTLR7/9依存性IFN-α産生経路阻害の分子機構について解析を行った。まず、M2-2蛋白質が結合するシグナル分子を探索した結果、IFN-α遺伝子の転写因子IRF7と直接的に結合することを見いだした。さらに、その結合には、IRF7のInhibitory domainを介することが明らかになった。このInhibitory domainは、IRF7のホモ二量体化に関わることが報告されていた。そこで、二量体形成に対してM2-2蛋白質がどのように影響するか解析した。TLR7/9経路の上流分子(MyD88、TRAF6およびIKKα)を発現させるとIRF7の二量体化が認められたが、M2-2蛋白質を発現する細胞では阻害されることが観察された。こうしたIRF7の二量体形成は、上流シグナル分子からの修飾、特にリン酸化が引き金になるとの報告があったことから、M2-2蛋白質によるIRF7のリン酸化阻害について検討した。その結果、M2-2蛋白質を発現させると、IRF7の活性化に必須であるとされる477位のセリン残基のリン酸化が抑制されることが明らかになった。以上の結果から、メタニューモウイルスM2-2蛋白質は、IRF7のリン酸化を阻害してその活性化を防ぎ、その後の二量体形成を阻害すると考えられた。
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Cell Death and Differentiation
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http://www.shiga-med.ac.jp/~hqmicro/