研究課題/領域番号 |
26460555
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
森田 英嗣 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70344653)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フラビウイルス / 複製オルガネラ / オートファジー / ESCRT |
研究実績の概要 |
フラビウイルスの感染細胞内に形成されるウイルス増殖に特化した特殊なオルガネラ:ウイルス複製オルガネラに感染特異的にリクルートされる宿主因子のスクリーニングによって同定されたオートファジー(ATG)因子群について、日本脳炎ウイルスとデングウイルス感染系を用いてフラビウイルス増殖における役割について解析を行った。まず、ウイルス感染細胞内におけるオートファジーのアダプター分子であるp62及びp62に結合し尚且つp62が関与する選択的オートファジーのターゲット因子として知られるユビキチンの局在について調べたところ、p62及びユビキチン共にウイルス複製オルガネラを取り囲むように局在していることが明らかとなった。また、オートファジー及びp62のウイルス感染における生理的役割を検討する為に、各種遺伝子欠損マウス由来の繊維芽細胞でのウイルスの増殖能について調べた。オートファゴソーム形成分子機構の上流で作用するFIP200と、下流で作用するATG16L1の欠損細胞を用いて調べたところ、どちらの細胞を用いた場合でもそれぞれの野生型細胞に比べ著しくウイルスの増殖能が低下していた。また、p62欠損細胞においても、野生型細胞に比べ著しくウイルスの増殖能が低下していた。これらの結果から、ウイルス感染細胞内に形成された複製オルガネラは、その周囲に存在する何らかの因子がユビキチン化され、p62によって認識されており、また、オートファジー機構及びp62にはフラビウイルスの増殖を亢進する役割があることが示された。また、ユビキチン化またはp62、及びそれによってリクルートされるオートファゴソームの二重膜は、ウイルス複製オルガネラの形成に何らかの重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的なオルガネラのプロテオミクス解析によって同定されたオートファジー因子群がフラビウイルス複製オルガネラ形成及びウイルスの増殖に関与するか、各種ATG因子の局在変化や、日本脳炎ウイルスやデングウイルス感染に対するATG因子変異体発現の影響、ATG遺伝子破壊細胞の作成と遺伝子欠損の影響などを調べ、その分子機構を明らかにし、創薬の標的となりうる分子間相互作用の生化学的特徴を明らかにするというのが、H26-H27年度にかけての計画である。これまでに、フラビウイルスの増殖に必要なATG因子の同定や、感染細胞内におけるこれら因子の挙動を明らかにしている。まだ、感染に伴うどのような現象がきっかけでATG因子がウイルス複製オルガネラにリクルートされるのか、その分子機構は明らかになっていないが、おおむね研究計画通り順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究計画どおり、申請者らがこれまでに行ってきた網羅的プロテオミクス解析によってフラビウイルス感染特異的に複製オルガネラにリクルートされるその他の小胞体関連因子の解析を進める。今後は、小胞体関連分解に関わるVCP複合体が複製オルガネラにリクルートされるという現象に焦点を当て解析を進める。VCPは細胞内の様々なプロセスに関与するAAA-ATPaseであり、N末端に種々のコファクターが結合することが知られている。まずは、フラビウイルスの増殖に作用するVCPはどのコファクターと共同して働いているのか明らかにする。また、フラビウイルスの増殖に宿主細胞のストレス応答反応や、それに伴う小胞体関連分解(ERAD)経路、翻訳停止機構がどのように作用するのか明らかにする。また、VCP複合体がどのようにウイルス複製サイトにリクルートされるのかその分子機構を明らかにする。さらに、抗フラビウイルス薬開発につながるかどうか、各種阻害剤を用いて、このウイルス因子—宿主因子相互作用の重要性を明らかにする。
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