研究課題
フラビウイルスの感染細胞内に形成されるウイルス増殖に特化した特殊なオルガネラ:ウイルス複製オルガネラに感染特異的にリクルートされる宿主因子のスクリーニングによって同定されたVCP複合体について、日本脳炎ウイルスとデングウイルス感染系を用いてフラビウイルス増殖における役割について解析を行った。VCPはAAA+ ATPaseであり、細胞内で6量体を形成し、種々のコファクターと結合することで細胞内にて様々な機能を示す。Yeast Two Hibrid法と共免疫沈降法、共免疫染色法によって、ウイルス側非構造(Non-structural: NS)蛋白質NS4B とVCPコファクターNpl4との間に直接的な相互作用があることを確認した。また、siRNAに抵抗性を示すサイレンス変異導入ベクターを用いた機能回復実験により、VCPに存在する2つのATPaseドメインのうち、C末側ドメインのATPase活性がウイルス増殖に重要であることがわかった。また、VCPの機能阻害剤Eer1, MDBN, DBeQ処理細胞にて、ウイルス増殖抑制が確認された。さらに、近年明らかになったVCPのストレス顆粒(Stress Granule: SG)解消能に着目し、フラビウイルス感染に伴うSG形成にVCP機能阻害がどのような影響を示すか検証したところ、DBeQ処理感染細胞において、SG形成細胞数が著しく増加することが明らかとなった。さらに、DBeQ処理感染細胞内の複製オルガネラ近傍にはSGマーカー: リン酸化eIF2αが蓄積していることも確認した。これらの結果から、ウイルスはNS4Bを介してVCPを複製オルガネラにリクルートすることで、SG形成を伴う宿主の翻訳系シャットダウンなどのストレス応答を回避する機構を備えているのではないかと考えられる。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件)
Cell Reports
巻: 16 ページ: 2339-2347
10.1016/j.celrep.2016.07.068.