平成27年度の研究成果により、Sortilinの機能回復がプリオン病の原因である異常プリオンの除去に有効であることまた、プリオン感染によるSortilinの発現量低下は、レトロマー複合体とSortilinとの相互作用の障害が原因でSortilinがエンドソームからトランスゴルジネットワークに回収されなくなりその結果、Sortilinが過剰にリソソームに流入し分解が亢進していることを明らかにした。そこで、平成28年度は、レトロマー複合体をSortilinとの相互作用を回復することでSortilinの発現量低下を抑制し、異常プリオン蓄積を抑制することを試みた。まず、Sortilinと直接結合するレトロマー複合体複合体構成因子であるVPS35の過剰発現を試みた。しかし、細胞に導入したVPS35遺伝子の転写は上昇していたが、VPS35タンパク質の発現量増加は認められず、翻訳の抑制や分解によりVPS35発現量が調節されていることが示唆された。これらの結果から、今後、VPS35発現量抑制機構の解明がSortilin発現量回復において重要であり、プリオン病治療法開発においても重要であると考えられた。 平成27年度に実施したプリオン感染実験において、Sortilin欠損マウスではプリオン感染に対して潜伏期間および生存期間が有意に短縮することを明らかにした。平成28年度は、継時的に脳内に蓄積される異常プリオン量、グリオーシスなどの生化学的、病理学的病態を解析した結果、Sortilin欠損マウスにでは、野生型マウスと比較して早期に異常プリオンが蓄積しさらに、グリオーシスも早期に生じることを明らかにした。これらことから、Sortilin機能はプリオン病の病態に大きく関与しており、プリオン感染によるSortilin機能抑制を抑制することがプリオン病治療において有効であることが示唆された。
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