研究課題
本研究内で得られた1型糖尿および急性膵炎を対象とした解析結果は、SAFVの膵臓に対する病原性を強く示唆するものであるが、本研究期間内に十分な症例数に拡大解析することが困難であり、因果関係を断定するには至らなかった。本件については、引き続き調査解析を継続する。SAFVの効率的な分離培養法確立を目指したウイルス蛋白の性状解析では、構造蛋白VP1はタンパク質の分解シグナルPEST配列を有することでその安定性が極めて低く、他の構造蛋白の共存下ではカプシド形成に伴いPEST領域がマスクされ分解が抑制されることが示唆された。また、プロテアソーム阻害剤MG132の添加によってもVP1 の分解は抑制された。これらのことから、培養時にタンパク質分解を抑制することでウイルスの分離効率が上昇する可能性が示された。ウイルス蛋白成熟に関わるプロテアーゼを阻害しないタンパク質分解阻害薬の探索・同定は今後の課題である。また、本実験系において見出された未知のウイルス蛋白は、ウイルスポリ蛋白の開始コドンより上流の非AUGコドンから翻訳が起こり、かつその途中に現れる終止コドンが読み飛ばされたサイズの大きいLeader蛋白(Large-Leader, LL)であることが明らかとなった。しかし、LLの具体的な翻訳開始点は依然不明である。このLLの発現機序を詳細に解析することは、IRES依存的翻訳における新たな発現制御機序を明らかにし、SAFVの病原性解析を大きく前進させるものと期待される。感染受容体の同定については、非感受性細胞に感受性を獲得させる方法での探索を種々試みたが同定には至らなかった。今後は、マウスノロウイルスの感染受容体同定に利用されたCRIPR knockout Pooled libraryを用いて、感受性細胞の感受性を消失させることから感染受容体を同定する方法を検討する予定である。
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