研究課題
ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染は子宮頸癌の原因であるが、HPV感染を排除する治療薬はいまだ存在しない。本研究は、ウイルス複製機構を標的とした新たなHPV排除方法の開発を目的とする。HPVゲノム複製にはHPVのDNAヘリカーゼであるE1の機能が必須であることから、ヒト293細胞を用いてE1発現量の調節機構について解析を行い、これまでにE1が自身のATPase活性に依存する形で分解を受けることを見出した。細胞をプロテアソーム阻害剤であるMG-132で処理するとE1の発現量が上昇し、ポリユビキチン化されたE1が検出されるようになることから、ユビキチン・プロテアソーム系にてE1が分解されることが示された。さらにE1の発現により、ユビキチン化された細胞内蛋白質の全体量が低下すること、またE1により細胞内のプロテアソーム活性自体が上昇することが明らかになった。これらの結果は、E1が自身のATPase活性によって細胞内ユビキチン・プロテアソーム系の活性化を誘導し、細胞内環境を大幅に変化させることを示している。
2: おおむね順調に進展している
E1の分解機構について、詳細なメカニズムが明らかになりつつある。特にE1の様々なアミノ酸変異体を用いた解析により、E1のATPase活性およびHPV DNA複製活性がE1自身の分解を誘導することが示されており、過剰量のE1は細胞増殖に対して負に働くことから、ウイルス複製蛋白質による新たなnegative feedback機構と考えられる。またE1のdeletion mutantを用いた解析により、E1の分解に必要なアミノ酸領域を同定している。さらに次年度に予定している、E1分解に関わる細胞ユビキチンリガーゼのスクリーニングに向けて、C33A細胞を用いたハイスループットのHPV DNA複製アッセイ系の構築が完了しており、全体に順調に進展している。
これまでにE1が細胞のユビキチン・プロテアソーム系で分解されることが分かったので、C33A細胞を用いたHPV DNA複製アッセイ系を用いて、E1のユビキチン化に関わる細胞ユビキチンリガーゼのスクリーニングを行う。約400種類のユビキチンリガーゼの発現プラスミドライブラリーを使用する予定である。さらに得られた候補ユビキチンリガーゼのHPV複製への関与を、HPVゲノムを保持する細胞で検証する。
遺伝子スクリーニングを次年度に行うこととしたため。また一部の年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。
C33A細胞を用いたHPV DNA複製アッセイ系を用いて、E1のユビキチン化に関わる細胞ユビキチンリガーゼのスクリーニングを行う予定。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 457 ページ: 295-299
10.1016/j.bbrc.2014.12.103. Epub 2015 Jan 7.
巻: 460 ページ: 555-560
10.1016/j.bbrc.2015.03.068. Epub 2015 Mar 20.
Journal of Virology
巻: 89 ページ: 2448-2452
10.1128/JVI.03433-14. Epub 2014 Dec 10.
Japanese Journal of Clinical Oncology
巻: 44 ページ: 910-917
10.1093/jjco/hyu112. Epub 2014 Aug 24.
臨床と微生物
巻: 41 ページ: 725-729