研究課題
ウイルスゲノム複製機構を標的とした新たなHPV排除方法を開発するために、HPVゲノム複製に必要なウイルスDNAヘリカーゼE1の細胞内レベル制御機構の解明を進めた。これまでに、E1が自身のATPase活性に依存してポリユビキチン化を受け、プロテアソームを介して分解されることを見出しており、今年度はE1分解に関わる細胞ユビキチンリガーゼの探索を行った。C33A細胞を用いたHPV DNA複製アッセイ系を用いて、384種類の細胞ユビキチンリガーゼを含む発現プラスミドライブラリーをスクリーニングした結果、複製レベルを低下させる細胞タンパク質としてFBXW5が見出された。一方で、293細胞でFBXW5をノックダウンしても、E1レベルに変化は見られなかった。またFBXW5はcullin RING E3ユビキチンリガーゼの構成タンパク質として働くことから、cullinのNEDD8化阻害剤MLN4924の効果を293細胞で検討したところ、E1レベルに大きな変化は認められなかった。これらの結果から、FBXW5はE1レベルを下げる以外のメカニズムで、HPV複製を負に制御していると考えられた。また細胞内E1レベルへの各種阻害剤の効果を調べる中で、ポリADPリボースポリメラーゼであるタンキレースの阻害剤XAV939の処理により、293細胞でのE1レベルが上昇することが分かった。タンキレースまたは他のポリADPリボースポリメラーゼがHPV複製を負に制御することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、ハイスループットのHPV DNA複製アッセイ系を用いた細胞ユビキチンリガーゼのスクリーニングが完了した。しかしこれまでにE1のユビキチン化に関わる細胞ユビキチンリガーゼは同定できていない。その原因として、多くの素過程からなるHPV DNA複製の値を、E1レベルの指標にしているためと考えられた。一方で、タンキレース阻害剤XAV939の処理により細胞内E1レベルが上昇するという新たな知見が得られたことから、E1レベルの調節機構解明のための糸口になることが期待される。
XAV939処理により細胞内E1レベルが上昇するメカニズムを、293細胞でのタンキレースのsiRNAノックダウンにより検討する。また293細胞でHA-TR-TUBEタンパク質を共発現させ、ポリユビキチン化されたE1を高感度に検出する実験系を構築して、E1ユビキチン化とプロテアソーム分解の分子機構を明らかにする。得られた成果については適宜、国際HPV学会で発表する予定である。
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成27年度分についてはほぼ使用済みである。
上記のとおり。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
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