研究課題/領域番号 |
26460564
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
柊元 巌 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒトパピローマウイルス / ウイルス複製 / ユビキチン化 / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
ウイルスゲノム複製機構を標的とした新たなHPV排除方法を開発するために、HPVゲノム複製に必要なウイルスDNAヘリカーゼE1の細胞内レベル制御機構の解明を進めた。これまでに細胞内E1レベルへの各種阻害剤の効果を調べる中で、ポリADPリボースポリメラーゼであるタンキレース(TNKS1/2)の阻害剤XAV939の処理により、293細胞でのE1レベルが上昇することを見出している。そこでその作用点を明らかにするために、XAV939の標的タンパク質であるTNKS1/2もしくはPARP1をsiRNAノックダウンして、E1レベルに対するXAV939の効果を検討した。その結果、TNKS1/2ノックダウンではXAV939の効果に変化は認められなかった。一方、PARP1のノックダウンにより、E1上昇効果が部分的に抑えられることが分かり、XAV939の作用点としてPARP1が示唆された。PARP1が細胞内E1レベルを負に制御している可能性が考えられる。これまでに、E1レベルを変化させる細胞ユビキチンリガーゼのスクリーニングの結果、RNF146の強制発現によりE1レベルが著しく上昇することを見出しており、RNF146がユビキチン化を介して分解を引き起こす標的タンパク質としてPARP1が知られていることからも、PARP1がE1レベルの制御に関わっていることが支持された。さらにXAV939のE1上昇効果は、ATPase活性を失ったE1変異体(K483A)では認められなかったことから、E1のATPase活性によって誘起されるユビキチン・プロテアソーム系が、XAV939の作用に関わっていることが分かった。また293細胞でHA-TR-TUBEタンパク質を共発現させ、ポリユビキチン化されたE1を高感度に検出する実験系を用いて、確かにE1がポリユビキチン化されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、細胞内E1レベルの制御に関わるいくつかの細胞タンパク質を見出すことが出来た。一方、その作用メカニズムの詳細はまだ明らかに出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後は293細胞以外の細胞(ヒト子宮頸部由来細胞など)を用いて、E1レベルの制御に関わる細胞タンパク質の作用メカニズムを解析する。また研究成果を国際学会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画通りに研究が進展せず、補助事業期間の延長を申請したため、引き続きE1分解のメカニズム解析を行う。 また年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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