ナイーブαβT細胞のホメオスタシスには、T細胞抗原受容体(TCR)からのシグナルと、サイトカインIL-7の2つのシグナルが必要である。一方、γδT細胞のホメオスタシスにはIL-15やIL-7が必要であることは知られているが、TCRシグナルが必要かどうかは分かっていない。そこで、TCRγ遺伝子座にあるエンハンサーの一つであるEγ4の欠損(KO)マウスを作製し、TCRγ遺伝子の転写を低下させることによりγδT細胞のTCRシグナルを弱められるかを試みた。Eγ4KOマウスではVγ1.1-Jγ4遺伝子のV-J組換えの障害により、胸腺でVγ1.1陽性γδT細胞がほぼ完全に欠損していたが、その他のTCRγ遺伝子のV-J組換えは正常であった。Eγ4KOマウスでは野生型(WT)マウスに比べて胸腺内TCRγ遺伝子の転写がすべて低下していたものの、γδT細胞の分化は正常であった。しかし、脾臓とリンパ節ではVγ2陽性γδT細胞の数が減少しており、減少しているVγ2陽性γδT細胞はCD27+CD45RBhigh(以下27+RBhi)の集団に限られることが判明した。また、27+RBhiの受け取るTCRシグナルは、WTマウスに比べてEγ4KOマウスで減弱していることも確認された。そこで、27+RBhi Vγ2陽性γδT細胞の分化ではなく、「維持」にTCRシグナルが必要かどうかを調べるために、WTマウスとEγ4KOマウスから単離した27+RBhi Vγ2陽性γδT細胞を同数混合して、Rag2KOマウスへ移植し、1か月後に解析したところ、回収されたVγ2陽性γδT細胞数はWTマウスよりEγ4KOマウスの方が明らかに少なかった。これらの結果から、27+RBhi Vγ2陽性γδT細胞の末梢リンパ組織での維持にはTCRシグナルが重要であることを示すことができた。
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