研究課題
直鎖状ポリユビキチン鎖は所属研究室で発見された新規ユビキチン修飾であり、HOIP、HOIL-1L、SHARPINからなるLUBAC(linear ubiquitin assembly complex)によって選択的に生成され、古典的NF-κB経路の活性化に関与することが知られている。研究代表者は、LUBACが古典的NF-κB以外にもCD40、TLR刺激によるERKの活性化に関与することを報告してきた。さらに、LUBACがTLR4依存的な細胞死を抑制していることを発見したことから、本研究課題では、LUBACによるERK活性化の機構及びTLR4下流のおける細胞死の制御機構について解明することを目的としている。平成26年度の研究に於いて、LUBACを欠損したB細胞をTLR4のリガンドであるLPSで刺激をした場合、細胞死に関与するシステインプロテアーゼCaspase-8とCaspase-3の活性化を認める事、この活性化がTLR4からのシグナルを伝えるアダプター分子の一つTRIFを欠損させる事で抑制出来る事を発見し報告した。平成27年度に於いては、LUBACを欠損したB細胞のLPS刺激による細胞死がどのような細胞死であるか、またその細胞死にCaspaseがどのように関与しているかについて解析を行った。LUBACを欠損したB細胞においてさらにネクロプトーシスに必須の分子RIP3を欠損させてもLPS刺激による細胞死はほとんど抑制されなかった。しかし、そこにCaspaseの阻害剤を加える事によってLPS刺激による細胞死は強く抑制された事から、LUBACを欠損したB細胞の細胞死はCaspaseを介したアポトーシスがメインである事が明らかとなった。現在、LUBACによるCaspaseの活性制御機構について解析を行っている。さらに、B細胞特異的にLUBACを欠損したマウスにおいてNP-LPSに対する抗体反応を検討したところ、NP-LPSに対する抗体反応が強く障害されていた事から、in vivoにおいてもTLR4を介したB細胞の反応にLUBACが重要な機能を持つ事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
LUBACによるTLR4依存的な細胞死に関しては、その細胞死がRIP3を介するネクロプトーシスでは無く、Caspaseを介するアポトーシスであり、Caspaseを阻害する事で抑制出来る事を明らかにした。現在、直鎖状ポリユビキチン鎖によるCaspaseの活性制御のメカニズムについて解析中である。さらに、LUBACによるTLR4を介した細胞死の制御が生体における免疫反応にも重要である事も証明した。また、LUBACによるERKの活性化制御の解析のためにHOIPやABIN2を欠損する細胞株を複数樹立し成功しその解析を始めたところである事から、研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
LUBACによるTLR4依存的な細胞死の制御機構に関しては、LUBACによるCaspaseの活性制御機構について、Caspase-8を含む複合体中の分子で直鎖状ポリユビキチン化されるものがあるかどうか、また直鎖状ポリユビキチン化によってその分子の機能がどのように修飾されるのか検討する事によって解析を進めていく。また、in vivoにおいてLUBACを欠損したB細胞のTLR4刺激による細胞死を抑制した場合に、NP-LPSに対する抗体反応が回復するかどうかについても検討を行う。LUBACによるERKの活性化機構については、樹立したHOIPやABIN2を欠損する細胞株を利用して解析を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
Current Topics in Microbiology and Immunology: B cell Receptor Signaling
巻: 393 ページ: 177-209
10.1007/82_2015_479.
J. Exp. Med.
巻: 213 ページ: 123-138
10.1084/jem.20150519.
Cell Reports
巻: 13 ページ: 561-572
10.1016/j.celrep.2015.09.015.
巻: 11 ページ: 715-726
0.1016/j.celrep.2015.03.059.