研究課題
直鎖状ポリユビキチン鎖は新規ユビキチン修飾であり、ユビキチンリガーゼ複合体LUBACによって選択的に生成され、古典的NF-κB経路の活性化に関与することが知られている。研究代表者は、LUBACが古典的NF-κB以外にもCD40、TLR刺激によるERKの活性化に関与することを報告してきた。さらに、LUBACがTLR4依存的な細胞死を抑制していることを発見したことから、本研究課題では、LUBACによるERK活性化の機構及びTLR4下流のおける細胞死の制御機構について解明した。これまでに、LUBAC欠損B細胞のLPS刺激による細胞死が、TLR4のMyD88、TRIFという二つのシグナル伝達分子のうちTRIFを欠損させる事で抑制出来る事からTRIFを介して生じていることを明らかにしている。加えて、LUBAC欠損B細胞においてさらにネクロプトーシスに必須の分子RIP3を欠損させてもLPS刺激による細胞死はほとんど抑制されないが、そこにCaspaseの阻害剤を加える事によってLPS刺激による細胞死は強く抑制出来る事から、LUBACを欠損したB細胞の細胞死はCaspaseを介したアポトーシスが主な細胞死の形態であるという事も証明している。平成28年度に於いては、直鎖状ポリユビキチン鎖がどのようにしてアポトーシスを抑制しているのか解析を行った。直鎖状ポリユビキチン鎖結合活性を持つ分子ABIN1に着目し、ABIN1を欠損させた細胞を樹立しLPS刺激を行ったところ、ABIN1欠損細胞ではLPS刺激によってCaspaseの活性化と細胞死が認められた。LPS刺激によるCaspaseの活性化は野生型ABIN1の発現によっては抑制されたが、ユビキチン結合能を欠失させた変異体では抑制されなかった。以上の結果から、直鎖状ポリユビキチン鎖による細胞死抑制にはABIN1が関与している事を明らかにした。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 36135
10.1038/srep36135.
Mol. Cell. Biol.
巻: 36 ページ: 1569-1583
10.1128/MCB.01049-15.