研究課題/領域番号 |
26460576
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高田 健介 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 講師 (40570073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 胸腺 / 正の選択 / T細胞 |
研究実績の概要 |
胸腺における正の選択は、抗原受容体(TCR)の構造に基づいて有用なT前駆細胞を選別し、T細胞の抗原認識特異性レパトアを決定する機構として長い間認識されてきた。しかし最近、正の選択を誘導する自己ペプチドの産生を担う胸腺プロテアソームが発見されたことで、正の選択の意義を再考する機会が生じた。本研究では、胸腺プロテアソーム欠損マウスの解析を通して、正の選択を介したT細胞の機能制御機構を明らかにすることを目的としている。 本研究課題の初年度である平成26年度は、これまでの予備的知見に基づいて、胸腺プロテアソーム欠損下で分化した各種モノクローナルTCR発現T細胞の機能を詳細に解析した。抗原応答性を評価するために抗CD3抗体および抗CD28抗体、あるいは特異的MHCテトラマーによる刺激を加えたところ、活性化マーカーの発現が低下していた。さらに、刺激後のカルシウム流入とERKのリン酸化の低下、定常状態でのTCRzeta鎖の部分的リン酸化の低下が認められたことから、TCRシグナル経路の上流部分における異常が抗原応答性の低下につながっていると考えられた。また、胸腺細胞の各分化ステージにおいて、TCRシグナル強度の指標となるCD5の発現を解析したところ、胸腺プロテアソーム欠損下では、正の選択シグナルを受けた直後の細胞でCD5の低下が見られたことから、より低い親和性の自己ペプチドによって選択を受けていることが示された。さらに、胎仔胸腺培養によって、親和性の異なるペプチドによって分化誘導されたモノクローナルTCR発現T細胞の機能を検討したところ、TCR-ペプチド間の親和性と抗原応答性に相関が認められた。以上の成果をまとめ、現在専門誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胸腺プロテアソームの欠損下、すなわち正の選択が障害された条件下で、T細胞の機能にどのような機能的異常が生じるかについて明らかにすることができた。また、このようにして生じた機能異常の分子メカニズムについては、シグナル異常の一端を示すことができた。一方、マイクロアレイ解析から責任分子を見出すことができなかったため、当初の計画を一部変更して、現在解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、正の選択が障害されることで生じるT細胞の機能異常の分子メカニズムの解明を目指す。これまでTCRシグナル制御分子の発現レベルの変化に着目して解析を進めてきたが、明快な答えが得られていないことから、過去の報告をもとに、細胞内分布との関連を検討する予定である。すでに実験に着手している。 また、当初の計画通り、正の選択を引き起こす自己ペプチドの特性の解明を目的とした実験に着手する。こちらについてはすでに実験系を確立しており、必要な実験材料(マウス、ペプチド)は入手済みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月納品となり、支払いが完了していないため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年4月に支払い完了予定である。
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