研究課題
これまでの研究から、腫瘍抑制因子の1つであるMeninを欠損させたT細胞において、抗原刺激による活性化後早期に、抑制性受容体の高発現や増殖の停止など疲弊現象が誘導されることを見出した。そこでMenin欠損マウスが、T細胞疲弊研究の良いモデルになると仮定し、リステリア感染に対するCD8 T細胞の感染免疫応答に関して以下の2つの重要な知見が得られた。1.T細胞の感染免疫応答におけるMeninの役割について明らかにするため、T細胞特異的Menin欠損マウスを用い、リステリア感染に対する抗原特異的CD8 T細胞の免疫応答を経時的に解析した。その結果、野生型で細胞数がピークとなる感染7日目にMenin欠損型では細胞数が減少し、効率よくリステリア排除出来ないことが分かった。また、感染5日目のT細胞について解析したところ、Meninの欠損により、抑制性受容体の高発現と共に、増殖の低下や細胞死が誘導されることが明らかとなった。2.T細胞疲弊との関連が疑われる細胞内エネルギー代謝についてメタボローム解析を行ったところ、Menin欠損型T細胞ではグルタミン代謝活性が過剰亢進しており、エネルギー代謝活性の異常が、T細胞疲弊を引き起こす可能性が示唆された。そこで、同定された疲弊に関与する細胞内エネルギー代謝系の阻害剤を用いたところ、Menin欠損型T細胞において、抑制性受容体の発現が低下することが明らかとなった。これらの結果、腫瘍抑制因子Meninは、細胞内エネルギー代謝を調節することによりT細胞疲弊を制御していることが示唆された。今後は、これらの成果をもとに、Meninとエネルギー代謝の関係を中心に分子レベルで疲弊制御メカニズムを解明し、Meninあるいはその下流の標的因子を制御することで、感染症対策を目的とした養子免疫療法などへの応用を目指す。
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