研究課題/領域番号 |
26460581
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
金関 貴幸 札幌医科大学, 医学部, 助教 (50531266)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
腫瘍を標的としたペプチドワクチン治療はその簡便さと普及性に加えて副作用の少なさからも新しい治療法として期待される。腫瘍抗原ペプチドは腫瘍細胞のMHCクラスI上に提示され、宿主のCD8+T細胞(あるいはcytotoxic T lymphocyte、CTL)はこれらを認識し特異的に傷害することが可能である。しかしながら、多くのヒト癌組織でMHCクラスI抗原プロセシング関連分子であるtapasinが発現低下しMHCクラスI低下を招いていることが明らかとなってきている。これらtapasin欠損型の腫瘍は多くのCTL認識を回避する免疫エスケープバリアントと考えられ、CTL治療を考えるうえで大きな問題点となり得る。本研究では、このようなエスケープバリアント腫瘍を特異的に標的可能な抗原ペプチドの同定を主眼としている。当該年度では、マウスモデルを用いて、tapasin欠損細胞に対する特異的なCD8+T細胞応答が惹起できること、これは従来知られている多くの腫瘍抗原とは異なったユニークな免疫応答であることを確認した。今後はこのような新しいタイプの抗原ペプチドの同定を継続し、腫瘍に対するペプチドワクチン治療モデルへと応用をすすめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Tapasin欠損細胞を特異的に認識するCD8+T細胞ハイブリドーマの樹立:これまでにtapasin欠損マウス由来脾細胞をMHCマッチした野生型マウスに免疫することにより、tapasin欠損細胞を特異的に認識するCD8+T細胞が繰り返し誘導できている。結果は免疫の後のCD8+分画におけるIFN-gamma産生アッセイで確認した。誘導したCD8+T細胞を用いてハイブリドーマ化(細胞フュージョン)を試行しているが、現時点でハイブリドーマは作成できていない。ひとつの原因として、免疫マウスに含まれる目的CD8+T細胞の割合が少ないことがあげられる(脾細胞の1%前後)。目的細胞のフュージョン効率をあげるために、現在はIFN-gamma産生細胞をセルソーターで単離濃縮し、その後にフュージョンを行う方法へ切り替えて継続中である。
2.ヒト大腸がん細胞株SW480のtapasin遺伝子欠損株の作成:Tapasin欠損したヒトがん細胞に対するCD8+T細胞応答の変化を並行して解析している。この目的のために、当該年度ではCRISPRシステムを用いてヒト大腸がんSW480細胞のtapasin遺伝子欠損株を作成できた。同遺伝子の欠損は、樹立した細胞株のtapasin遺伝子配列解析、およびウエスタンブロットによるタンパク発現の欠損の2つの方法で確認できた。
以上から、ハイブリドーマ化がまだ未完であるものの、研究計画としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
Tapasin欠損細胞を特異的に認識するユニークなCD8+T細胞のリガンド同定を目的として、同CD8+T細胞のハイブリドーマ化を目指す。前述したセルソーターの組み合わせなど手法的な変更・改善を組み入れているもの、実験計画の流れには全く変更はない。リガンドはMHCクラスIに提示されるペプチドであり、同定後はMHCクラスI結合性および拘束性の確認、さらに野生型マウスにペプチド免疫することでin vivoでのCD8+T細胞免疫原性を確認する。最終的には、誘導したCD8+T細胞とtapasin欠損型腫瘍パネルを組み合わせ、in vivoマウスモデルでの細胞障害アッセイを行い、新規ペプチドの抗腫瘍ワクチン治療応用性を検討する。
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