研究課題/領域番号 |
26460584
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金谷 高史 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (20553829)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NF-kB / FAE / M細胞 / Spi-B |
研究実績の概要 |
転写因子RelBの核内移行を指標にして腸管上皮細胞におけるNF-kBの非古典的経路の活性化を調べたところ、パイエル板などの腸管関連リンパ組織の粘膜面を覆っている上皮細胞層(follicle-associated epithelium: FAE)において非古典的経路の活性化が認められた。さらにM細胞の核において特に強いRelBの核内移行が顕著であることが認められた。次にNF-κB非古典的経路のM細胞分化における重要性を評価するため、RelB欠損マウスを用いた解析を行った。しかしながら、RelB欠損マウスではパイエル板が完全に欠損するためFAEにおけるM細胞分化を評価することができない。そこで小腸上皮幹細胞の初代培養系(オルガノイド)を用いた。野生型マウスより作製したオルガノイドへリコンビナントRANKLを加えるとオルガノイドへM細胞を誘導することが可能であるRelB欠損マウスよりオルガノイドを作製し、RANKLで刺激を加えたところ、M細胞マーカーの発現は誘導されなかった。このことからM細胞の分化にはNF-κB非古典的経路によって活性化された転写因子RelBが必須であることが明らかとなった。NF-κB非古典的経路の活性化がM細胞の分化に十分な因子であるか検証するため、オルガノイドにレンチウイルス感染によってRelBおよびp52を強制発現させたところ、M細胞分化のマスター転写因子であるSpi-Bの発現が誘導された。またレポーターアッセイを行ったところ、p52/RelBによって形成されるヘテロダイマーがSpibのプロモーター部位へ結合する可能性が示された。これらのことから、NF-κB非古典的経路は腸管上皮細胞においてSpi-Bの発現を直接的に活性化させることでM細胞分化に関与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NF-kBの非古典的経路は腸管上皮細胞の1つである、M細胞において顕著に活性化していることが確認された。そしてRelB欠損マウスのオルガノイドを作製することによりNF-kBの非古典的経路がM細胞の分化に必須であることを証明した。また、M細胞分化のマスター転写因子がNF-kBの非古典的経路によって直接的に制御されていることを明らかにした。このように本年度はin vitroの試験を中心に行い、NF-kBの非古典的経路のM細胞分化における役割を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
M細胞の分化はRANKLによって誘導される。また、RANKL-RANKのシグナルはNF-κBの古典的経路および非古典的経路の両方を活性化させることが知られる。RANKの下流ではTRAF6が古典的経路の活性化に必要とされることから、M細胞におけるTRAF6の役割を解析していく予定である。オルガノイドを用いた評価系、また遺伝子組換えマウスを用いた個体解析を用い、in vivoおよびin vitroの両面から検証していく予定である。特に個体を用いた解析では腸管免疫応答のみならず腸内細菌叢の変化に着目する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より、オルガノイド作製に使用する試薬および次世代シーケンサーに用いる試薬の消費量が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に次世代シーケンサー用サンプルを調製する試薬および遺伝子発現解析用試薬の購入に充てる。
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