本研究では、カンボジアにおいて、小児疾病における母親の保健サービス選択と潜在的な保健サービス選好を分析した。分析では母親の時間選好やリスク選好といった行動経済学的要因と保健サービス選択や選好との関連を検討した。時間選好率が低い母親は子の治療を先送りする傾向にあり、リスク選好度の高い母親は、子の下痢に際して公的保健施設でなく民間保健施設を選択する傾向にあった。また、母親は保健サービスの費用よりスタッフの資格や診療時間など非金銭的要素を重視していた。本研究結果は、ヘルスプロモーションや保健サービスの質的改善において、サービスに対して母親がもつ不確実性の除去や先送り防止の必要性を示唆している。
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