研究課題/領域番号 |
26460593
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 淳一郎 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (20419401)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医学教育 / 授業時間短縮 / 学部認証 |
研究実績の概要 |
本研究では、授業時間90分から60分に短縮したうえで総授業時間を2/3に短縮することが学力低下を引き起こすかを確認しするとともに、短縮授業がどのように学生に受け止められるかを調査することを目的としている。初年度である平成26年度は学力調査およびアンケートによる学生の意識調査を中心に行った。 〇学内の各種試験成績について 90分授業を受けた学生の成績と60分授業を受けた学生の成績をT検定により比較し、学力の変化を確認した。その結果、授業ごとに差はみられたものの多くの教科にて不変あるいはやや学力向上との結果を得た。学内試験では、年ごとに試験の難易度が一定でない可能性があるため、共用試験機構による医学系CBTの能力値の比較も行った。その結果、平均点では90分授業60.6に対し60分授業は58.8と若干90分授業において高い能力値となったものの、P値0.31であり両者に差がないとの結果になった。 〇授業時間の短縮について 学生がどのように考えているかを確認するためのアンケート調査を2年次~6年次生を対象に行った。アンケートはコンジョイント分析の手法を用いた。質問項目としては1)授業を担当する教員の数 2)熱意が現れるような授業であるか 3)授業のポイントを強調するか 4)授業時間(60分、90分) 5)能動型授業であるか とした。60分授業を受けている学生の結果、1)担当教員は少ないほうがよい(重要度値6.67) 2)熱意がある方がよい(重要度値26.67) 3)ポイントは強調してほしい(重要度値53.33)4)60分授業のほうがよい(重要度値6.67)5)受動型授業がよい(重要度値6.67)という結果になった。この傾向は90分授業を受けた学生でも同様であった。つまり、学習者は授業において重要なポイントが強調される熱意のある授業を望んでおり、これらに比べると授業時間はあまり重要と考えていないことがわかった。また、90分授業よりも60分授業を望んでいることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、〇「授業時間を2/3としたことが学生の学力にあたえる影響」〇「教育者・学生の60分授業に対する意見」〇「実習先病院の特徴が、学生の知識・態度に与える影響」を明らかにすることであった。このうち「授業時間を2/3としたことが学生の学力にあたえる影響」については、ほぼ影響しないとの結論に達しつつある。また、「教育者・学生の60分授業に対する意見」についても、当初の予定を変更してコンジョイント分析の手法を用いたことで、学生が何を望んでいるかに加え、「どの程度の強さ」で望んでいるかを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、この「何をどの程度の強さで望んでいるか」はフォーカスグループインタビューを用いて行う予定であったが、コンジョイント分析によりある程度の結果が得られたことを受け、インタビューの目的を少し変更し、なぜ学力低下が起こらなかったかを明らかにできればと考えている。また、本年度から教育協力病院(35施設)において臨床実習が開始になるため、当初の予定通り実習先病院の特徴が学生の知識態度に与える影響を明らかにしていきたい。加えて、学生の考え・希望を理解する上でコンジョイント分析が有効であったことから、本年度の意識調査においてもこの手法を継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度に学生からのインタビューを行う予定でテープ起こし費を初年度に計上した。しかしながらアンケート手法を変更したことにより、当初インタビューにて収集する予定であった情報の一部を入手することが可能になったため、アンケート結果に基づくインタビューを行うほうが適切と考えインタビューの時期を平成27年度以降に変更した。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の理由による変更であり、使用目的(フォーカスインタビューに係る費用)の変更をすることなく、平成27年度および28年度に使用する予定。
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