研究課題/領域番号 |
26460600
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山敷 宣代 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (90420215)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40252449)
海道 利実 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80314194)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 臓器移植 / 地域医療連携 / チーム医療 |
研究実績の概要 |
[I]医療従事者向け教育プログラム構築のための調査: 平成26年度には,肝移植医療において実臨床で直面する問題点について調査を行った.社会面では,医療従事者の臓器移植についての関心の程度を把握するため,研究者らが所属する中規模病院の職員を対象とし,臓器移植に関する意識調査を実施した.532人中401人から回答を得た.臓器移植について「関心がある」者は65.1%で,平成25年度内閣府調査(57.8%)と比較し高い関心がうかがわれた.しかし臓器移植に関連する法律への理解は一般国民と同等であり,医療従事者に向けた専門的知識の伝達が今後の課題と考えられた. 移植チームのあり方については,米国移植チームの調査を行った.米国2施設(Cleveland ClinicおよびBaylor University Medical Center)の訪問調査では,移植チーム構成員としての肝臓内科医数が日本の移植施設よりはるかに多く,術前術後の診療に大きく寄与していた.肝臓内科医の下でトレーニングを受ける内科系研修医にも移植適応などの専門的知識の共有が行われていた. [II]患者サポートプログラム構築のための調査: 日本では移植を必要とした患者家族に対する心理社会的問題には移植コーディネーターや移植医,精神科医が支援にあたるが,医療ソーシャルワーカーなどによる専門的な介入が不足している.米国移植施設調査では,心理社会的な問題を専門的に取り扱う医療ソーシャルワーカーが複数名移植チーム内に在籍し,心理社会的問題のサポートを全面的に行っていた.また生死に向き合う移植待機患者と家族にとって,精神的なサポートが重要であるが,米国ではチャプレンが常駐しており,傾聴,スピリチュアルサポートにあたっていた.さらに移植適応から外れ緩和ケアへと切り替わる際,緩和ケア専門医がこれらの診察を行っていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に計画としていた医療従事者向けの教育プログラム作成は遅れている.当初予定していた,多職種参加型のケーススタディーによる検討のために定期的に時間を割くことは困難であったため,アンケート調査および訪問聞き取り調査に変更した.今後は各領域の専門家への聞き取り調査を中心に行い,実質的なプログラム作成を実施していく.また,初年度に計画していた待機患者を対象とした調査,および連携施設を対象とした調査は,調査を前提とした倫理申請が進んでいないため,研究自体が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
[I]医療従事者向け教育プログラム構築にむけて: H27年度以降は,アンケート調査および訪問聞き取り調査を引き続き行い,医師を対象とした教育用プログラム組立および支援ツールの開発に取り組む.医師向けには,現在移植外科医が中心に行っている医療行為について,内科医にわかり易いように言語化,図表化していくことが重要と思われる.社会面では,平成27年度も引き続き,医療従事者における臓器移植に関する意識調査を実施する. [II]患者サポートプログラム構築にむけて:H27年度以降は,待機患者を対象とした調査,および連携施設を対象とした調査を実施し,移植待機患者と家族のニーズを把握し,支援のためのプログラム(ニーズの高い問題点について,待合でタブレット端末を用いた自己学習が出来るなど)の開発を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた多職種参加型ケーススタディーの開催が困難であったため,専門職講師に対する謝金が生じなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に計画しているアンケート調査・解析のための費用,聞き取り調査のための出張費に充てる予定である.
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