研究課題/領域番号 |
26460602
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
粟屋 剛 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20151194)
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研究分担者 |
宍戸 圭介 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (10524936)
中塚 幹也 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (40273990)
大林 雅之 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (50176989)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 移植ツーリズム / 渡航移植 / 患者の人権 / ELSI |
研究実績の概要 |
本科研「アジア移植ツーリズムに関する社会調査の実施とそれに基づくELSIの検討」は、前科研「中国移植ツーリズムに関する社会調査の実施とそれに基づくELSIの検討」の延長線上にあるものである。 2014年度に患者の人権の視点からアジア移植ツーリズムの全体像およびその法的、倫理的問題点について第121回日本法政学会シンポジウム「医療政策と法 ─医療を取り巻く諸政策を中心として─ 」(岡山大学、2014年11月15日)で報告した(タイトル:「アジア渡航移植患者の人権」)が、2015年度はこの報告を論文化した(粟屋剛「アジア渡航移植患者の人権」法政論叢第51巻第2号257-269頁 [下記、雑誌論文欄])。内容的にはとくに、アジア渡航移植患者への診療拒否の問題を取り上げている。この論文は中国地方の某移植医を通じて厚労省の関係者にも届いている。 また、移植ツーリズム一般の法的問題についても、活字化した(粟屋剛「臓器売買と移植ツーリズム」甲斐克則編『臓器移植と医事法』(信山社)239-256頁[下記、図書欄])。ここでは、移植ツーリズムの違法性の有無(患者の渡航移植は違法か否か)について論じている。渡航移植サポート業者をめぐる法的問題(渡航移植サポート業務は違法か否か)も取り上げている。 ほか、国内各地、各種の生命倫理研究会にて、上述の点を含むアジア移植ツーリズムのさまざまな法的および倫理的問題点について、研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者は2014年度、精力的にアジアの国々(具体的には、2014年5月カンボジア、9月ベトナム、2015年1月フィリピン)を巡り、また、2015年度(2015年11月)、フィリピン(マニラ)で開催されたアジア生命倫理学会の際に現地にて、移植ツーリズムや臓器売買を含めて広く臓器移植事情に関する諸種の情報を得てきた。なお、代表者は1992年からアジア全域で現地調査を含めて臓器売買に関する諸種の調査をしてきており(粟屋 剛『人体部品ビジネス』(講談社、1999年)ほか多数に報告している)、それらの調査は今回の科研の一環である「アジア移植ツーリズム調査」のベースとなるものである。 まだ2016年度にアンケート調査及び聞き取り調査(さらには、それらの分析)の補足が必要であるが、ほかは予定通り進行しているので、「おおむね順調に進展している」との評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、フィリピン、ベトナム、カンボジアで移植を受けた患者へのアンケート調査及び聞き取り調査を集中的に行う(前年度、関連原稿執筆を含めて多忙であったため、なし得なかった)。 具体的には、(前期は講義や業務で多忙なので)9月以降、渡航移植サポート業者を含めて知己の移植医療関係者からの紹介、協力等を得て、個々の渡航移植患者にアンケートを発送する。そのうち返送があったもの(回答)を集計し、統計学的解析を含めて総合的な分析を行う。また、回答時に個別聞き取り調査に同意していた渡航移植患者に対しては、先方に出向いて面談の形で聞き取りを行う。それらも、2016年度内に、集計の上、分析を行う。さらには、それらのデータを適宜、ホームページなどで公開する。これも、2016年度内に行う。なお、もちろん、個人情報の取り扱いには細心の注意を払う。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研雇用者が中途退職し、その雇用支払い分が残となった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査旅費として使用する予定。
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